【新宿駅痴漢冤罪事件】 警部補の証人尋問で明らかになった「曖昧な逮捕」

【新宿駅痴漢冤罪事件】 警部補の証人尋問で明らかになった「曖昧な逮捕」

 2009年12月11日、東西線早稲田駅で大学職員の原田信助さん(当時25)がホームから転落死した。前日にJR新宿駅で痴漢に疑われ、新宿署内で取り調べを受け、釈放された帰りの出来事だった。遺族の母親、尚美さんは「違法な取り調べがあった」などとして、東京都を相手取って損賠賠償を求めている。7月の進行協議(非公開)で、新宿署の副署長と生活安全課長が証人尋問に呼ばれることが決まった。

 3月に行われた証人尋問では、新宿西口交番の警察官で、新宿駅構内の現場に向かったHとSの2人、交番が取り扱う事件の担当部署となる地域課のI警部補、迷惑防止条例違反事件(痴漢事件)の場合の担当部署となる新宿署生活安全課のY警部補、原田さんの死後に設置された「特命捜査本部」の責任者で新宿署刑事課のM警部補の5人が証言台に立った。

 7月の進行協議で副署長が証人として認められたのは、原田さんの死後に、母親の尚美さんに対する説明と、その後の捜査が食い違うためだ。尚美さんの説明によると、新宿署に副署長を訪ねたときに、「(原田さんが)やったのか、やっていないのか、痴漢と特定できないと認定した」と話している。つまり、尚美さんには、亡くなった原田さんが痴漢と特定できず、捜査は終えたかのようなニュアンスだった。

 原田さんの死後、尚美さんは副署長を訪ね、原田さんが痴漢をしたか、しないのかが特定できなかった、と説明していた。しかし、2010年1月には、原田さんを痴漢容疑で書類送検。被疑者死亡で不起訴となった。

 証人尋問で、特命捜査本部の実質的責任者のM警部補は、原告側代理人に「副署長が原告に説明するのを事前に相談していたのか?」と聞かれ、「(相談をしたかどうかは)記憶にない。この段階では(捜査本部としては)痴漢と断定してない。捜査をしている途中だった。なぜ、副署長がそう言ったのかはわからない」と証言した。

 副署長はこのあたりの捜査の進行状況について詳しい証言を求められる。

 また、生活安全課長は、痴漢捜査の担当部署の責任者だ。原田さんが新宿署に連行された09年12月10日から11日にかけて、新宿署ではJR新宿駅に出向き、防犯カメラの提出を求めている。しかし、担当者がいないということで、その時は見れていない、という。

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