前回の箱根駅伝で、原監督は「ワクワク大作戦」なるものを掲げて初Vをもぎ取った。そして今回打ち立てた戦略は「ハッピー大作戦」。この作戦名はメンバーエントリーの前夜、風呂に入っている時に湧き出てきたそうで、
「みんなのハッピー指数を上げる。テンションを上げていく。前回は私自身がワクワクしたが、今度は選手、さらには皆さんをハッピーにさせるレースをしたい」
今季の青学大はとにかく選手層が厚い。先のトークバトルでは、明治大の西弘美監督が「16番以降(箱根駅伝には16名が選手エントリーできる)の選手でも欲しい」とうらやむほどの総合力を誇っている。
7月に韓国で行われた学生のオリンピックとも言われるユニバーシアードでは、ハーフマラソンで小椋裕介(4年)と一色恭志(3年)が日本代表に選出され、小椋が金、一色が銀と青学勢が世界の舞台でワンツーフィニッシュを果たした。
学生長距離界において一流選手の証しとも言える1万メートル28分台の選手を11人も擁するのも、青学大の強さを物語る。28分台の選手といえば、一昔前までは各校1人いるかどうか。さらに遡れば、日本人で初めて28分台に突入したのが、64年の東京五輪、男子マラソン銅メダリストの円谷幸吉。半世紀前のことだ。
今回の箱根駅伝に出場する全21チームに28分台の選手が66名登録されたが、1人も28分台がいないチームもある。もちろん足し算で計れないのが駅伝のおもしろさだが、他校ならエースを担える選手が11人もいるのだから、どれほど強力な布陣が築けているかは容易に想像がつくだろう。これが神野の不調が報道されてもなお、青学大が優勝候補筆頭にあげられる揺るがない根拠である。
青学大がこれほどの強豪校に成長できたのは、原監督が打ち出したチームカラーに引かれ、高校時代から第一線で活躍していた選手が入部するようになったことが大きい。だが、それは他の強豪校も同じこと。大学入学後も着実に力をつけることができているのは、独特のトレーニングに秘密があるからだ。