先日、電子メールも税務調査の対象になりうる、と申しましたが、この点に関連して、取引先と秘密保持契約を結んでいるような場合には、メールの開示を拒否できる、といった趣旨の記述も見られます。税務調査で調査官が配慮してくれることもありますが、この点建前としては守秘義務を目的に、調査官のチェックを断ることは、法律上は無理とされていますので、注意しなければなりません。
実際のところ、国税庁が公表しているFAQによれば、「業務上の秘密に関する帳簿書類等であっても~法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものです。調査担当者には調査を通じて知った秘密を漏らしてはならない義務が課されていますので、調査へのご協力をお願いします。」と説明されています。
■「取引先との守秘義務を理由に、税務調査官の質問に回答しない」は認められない!
この点、過去の裁判例などを見ますと、司法書士や弁護士、歯科医師などが業務上知り得た秘密について、正当な理由がない限り漏えいすることは許されないと法律には書かれてあるものの、税務調査において必要がある場合には、国税職員がチェックすることは問題がないとした事例が多数あります。
このため、守秘義務があるからといって税務調査で調査官の質問に回答しないなどすることは原則許されない、と言わざるを得ません。
■「調査官には二重の守秘義務」が存在する
ところで、このような守秘義務を上回る税務調査が許される理由として、税務職員には二重の守秘義務が設けられていると説明されています。税務職員は、公務員としての守秘義務と、税務調査で知り得た情報に対する守秘義務という、二重の守秘義務があるため、仮に調査官が機密情報を入手しても、それが流出することは絶対にない、と説明されることが多くあります。
近年、OB税理士との癒着などによる国税の情報の漏えいが多くあることを踏まえると、果たしてこの建前が正しいか疑問もありますが、裁判例を見る限り、この二重の守秘義務で問題がないと納得せざるを得ないというのが正直なところです。
取引先との守秘義務を理由に税務調査の質問に無回答は問題なし?(松嶋洋)
2016.03.11 21:00
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