現役Gメンが明かす「万引き老人」の悲痛実態!(3)“志願兵”を嫌がる警察署

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現役Gメンが明かす「万引き老人」の悲痛実態!(3)“志願兵”を嫌がる警察署

「10日ほど前に拘置所から出てきたんだけど、メシは食えないし、寝るところもないから戻りたいんだ」

 応接室でテーブルに並ぶ弁当と総菜を前に、悪びれることなくそう話す男。

「俺、執行猶予中だから逮捕してもらえるよな」

 店からの通報により、程なくして警察官が到着。だが──。

「万引き犯が外国人や暴力団員だった場合は、たとえ盗まれた商品がガム1個でも、警察は逮捕します。ところがホームレスの場合は『こいつらはシャバにいるほうがつらいからな』と、警察が店側に届け出を見送るよう仕向けるケースは少なくありません。すると、そいつがまたやって捕まる。その繰り返し。包丁を万引きした“志願兵”が『捕まえてくれ』と自首したら『ふざけるな』と相手にしてもらえず、とりあえず警察官が同行してホームセンターに包丁を返したあと、管轄外に出してしまった。で、そいつがタクシーを無賃乗車して隣県の警察署に出頭した、という話もあります」

 万引きの事後処理の決定権は被害にあった店の店長にあり、09年に全件通報指導が強化された。だが、身寄りのない高齢者やホームレスの扱いを嫌がる警察は、「金なし」「ヤサなし」「ガラウケ(身柄引き受け先)なし」の三拍子がそろうと、店長に被害申告をさせないよう誘導し、処理を警察に一任させるように促すことも少なくないという。

「だから“志願兵”を捕まえて通報すると、所轄署に露骨に嫌がられます。『留置場の中で死なれたら困るから』と、あからさまに言う警察官もいますね」

 金も食べ物もなく逮捕すらしてもらえない。そこにはまさに、アベノミクスから置き去りにされた老人の現実があった。ジャーナリストの大谷昭宏氏が嘆く。

「例えば、年金が2カ月で13万円の人の場合。月3万円の公営住宅に住んでいれば、ひと月当たりの生活費は恐らく2万~3万円。蓄えがなければ、基礎年金だけで生活していくのは非常に難しい。そういう貧しさが気持ちをすさませ、ふだん食べたことのないような高級な品物に手が出てしまう。アベノミクスなんていうのは大ウソで、ほんの一握りの人が株で恩恵を受けただけ。でも、その人たちだって、今ではスッテンテンになっているはず。国民に貧しさを強いている安倍政権の経済政策のあり方こそが、高齢者を追い詰め、万引きを誘発している要因と言えるでしょう」

 伊東氏は言う。

「彼らはブツに着手したあと、それをしまっても周りの目につかない『死角』を探します。でも店内が混んでいて、なかなか場所が探せない。そんな姿はまるで死に場所を探してさまよっているようで、胸が詰まることがあります」

「新しい判断」などと詭弁を持ち出し、経済政策失敗の責任から逃れようとするアベ政治が続けば、貧困にあえぐ万引き老人はさらに増えることになるだろう。

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