「型破り大臣」として大いに話題を提供した田中角栄は、昭和33年6月、岸信介首相が第2次内閣を組織したのを機に郵政大臣を辞職した。翌34年9月からは自民党副幹事長に就任。ここでも岸が悲願とした日米新安保条約の成立に大いに馬力を発揮したのだった。
35年に入ると、安保条約をめぐって国内は騒然となった。社会党以下野党はもとより反対、一方で猛反対する「全学連」の学生デモと機動隊が衝突、学生は国会に乱入し、東大生の樺美智子が犠牲になるなど大揺れとなった。当時の政治部記者のこんな証言が残っている。
「田中はその後の日本経済のためにも、何としても条約を通さなければというのが信念だった。5月19日から20日にかけての衆院本会議の強行採決では、『議長を守れッ』と自民党の若手議員に取り囲んで守るように指示を出すなど、何とも目立っていた。3年後の昭和38年に、議員会館と国会は議員の行き来ができる地下道で結ばれるようになるが、これも会館と国会を結ぶそれまでの陸橋がデモ隊に遮断された格好になっていたことから、田中がこうしたことでは政治が停滞するとしてアイデアを出した結果だったんです」
その後、この日米新安保条約は何とか自然承認されて岸首相の辞任となるのだが、田中は副幹事長の一方で、どうしたものか売春対策審議会の委員も務めていた。時に、田中は愛人でもある秘書だった佐藤昭子に、冗談めかしてこうボヤいた。
「オレはあの売春防止法、反対の方なんだ。大体、あんなものを通したから学生、若者が欲求不満となってデモに出て暴走するんだ」
岸の退陣を待って、7月、池田(勇人)内閣が成立した。その後の12月の第2次内閣下で田中は自民党の水資源開発特別委員長となった。水資源は各省の利害が複雑に絡み、ここでも田中の馬力ぶりは緩むことはなかった。田中委員長の采配を気に入らぬ重政誠之という時の「農村族」の大ボスと、つかみかからんばかりに激しくやりあったことがあった。しかし、このとき、早くもその数日後に田中の巧まざるの人心収攬の妙が出た。心情をぶちまけた重政へ“わび状”を出したのであった。
巻き紙の和紙に墨痕鮮やか、「先輩に対する暴言、失礼をおわびさせていただきたい。
人が動く! 人を動かす! 「田中角栄」侠(おとこ)の処世 第27回
2016.07.18 14:00
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