日本の長期金利は相変わらず下がり続けており、7月1日の市場における10年債の利回りは▲0.26%に低下し、過去最低を更新した。しかも、7月5日の国債入札では、落札利回りが過去最低の▲0.243%を記録。政府は2兆4000億円の国債を発行し、約600億円「もうけた」という話になってしまった。
日本の国債利回りが「超低迷」しているのは、日本銀行が量的緩和政策を継続しているためだ。
今年6月、日本のマネタリーベース(以下、MB)が400兆円を突破。MBとは、政府が発行する貨幣(硬貨)、日本銀行が発行する現金紙幣、日銀当座預金残高の合計である。
日本銀行は現在、年に80兆円の純増となるべく市中銀行から国債を買い取り、日銀当座預金残高を増やす量的緩和を続けている。結果的に、6月末のマネタリーベースの残高が400兆円の大台を突破してしまったのだ。
筆者は民主党政権期に、現日本銀行副総裁の岩田規久男教授(上智大学・学習院大学名誉教授)と話す機会があり、教授が、
「デフレはMBを増やすことで脱却できる」
と、説明したのをはっきりと記憶している。驚いた筆者は、
「MBですか? マネーストックではなく?」
と、確認したわけだが、岩田教授は、
「MBです」
と、断言した。
岩田教授の「期待インフレ率理論」は、
「日本銀行がインフレ目標をコミットメントし、量的緩和を継続することで、期待インフレ率が上昇し、実質金利が下がり、投資(主に)が増え、デフレ脱却できる」
というものだった。岩田教授のロジックが正しいならば、確かに量的緩和でMBを拡大すればデフレ脱却できる「はず」である。
ところが現実には、MBが岩田教授の日銀副総裁就任以降、250兆円近くも増えているにもかかわらず、直近のインフレ率(コアCPI)は▲0.4%。コアコアCPIにしても0.4%と、上昇ペースが鈍ってきている(注:コアCPI=価格変動の大きい生鮮食品を除いた消費者物価指数。食料とエネルギーを除いた指数がコアコアCPI)。
当たり前だ。MBを拡大するだけでデフレ脱却できるはずがない。理由は、インフレ率とはモノやサービスの購入で決まるためである。すなわち、総需要だ。
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第183回 量的緩和とプライマリーバランス目標の不整合
2016.07.20 10:00
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