遺伝子治療もメスを使わない先進医療の一つ。山梨大学医学部名誉教授の田村康二氏に解説してもらおう。
「健康な人はガン細胞を生み出すガン遺伝子と、その発生を抑えるガン抑制遺伝子のバランスが取れていますが、食事や生活環境、ストレスなどさまざまな要因によってガン抑制遺伝子が傷ついてしまうと、異常遺伝子を持つ細胞の分裂が際限なく進み、ガン細胞は増え続けるばかりです。遺伝子の傷つき方は人によって違います。遺伝子診断により、どの遺伝子に異常が出ているのかを調べ、遺伝子変異を正確に把握し、変異に合わせた治療を行うのが遺伝子治療です」
ガンの遺伝子治療は世界的な潮流になっている。米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」によると、13年に世界で実施された遺伝子治療臨床試験のうち、ガンが全体の6割以上を占め、アメリカでは多くの成功症例が報告されている。「血液のガン」と呼ばれる白血病にかかった危篤状態の7歳の少女に「治療遺伝子」を注入したところ、劇的な改善が見られ、以降、同様の治療を施した白血病患者19人の体内からガン細胞が消滅したという。
「海外の最先端医療も選択肢の一つに加えてもいいのではないでしょうか。麻央さんには、本場アメリカに渡って遺伝子治療を受けることをおすすめしたい」(前出・田村氏)
ガン抑制遺伝子を用いた遺伝子治療は国内でも受けられる。薬剤を点滴もしくは注射によって患部へと送り込むだけで、入院は必要なく、大きな副作用もないという。ただし、1回の投与につき70万円以上かかることもあり、継続的に治療を行うと費用は莫大な額に上る。
最後に紹介するのは最新のガン治療薬「オプジーボ」だ。これまでの薬物療法は、ガン細胞を死滅させる「抗ガン剤」が主流だったが、この新薬は人間の免疫機能を活性化させ、ガン細胞と闘わせる。そのため免疫療法とも呼ばれる。
「画期的な新薬として注目を集めています。昨年12月の時点で、肺ガンと皮膚ガンの一種の治療に保険適用が認められており、年内には腎臓ガンの一部にも解禁される見通し。他の部位のガン治療に使用する際は保険がきかないため、この新薬の薬剤費は年間3000万円以上。