田中角栄大蔵大臣による“伝家の宝刀”、大バクチの「日銀特融」により「山一證券」危機は回避され、やがて株式市場にも活気が戻った。これを機に株価は右肩上がりに転じ、とりわけ当時、時代の主役となりつつあった自動車、家電のそれは力強かった。また、山一への282億円の特融への完済は、当初「早くて15年、遅れれば30年はかかる」という見方が支配的だったが、山一はこれをたった4年4カ月で果たしてみせたのであった。
山一の苦境時、政・官・財界の一部からは「『日銀特融』と言えど公的資金の投入、国民の税金、一民間会社を救済することには大いに疑念がある。ハード・ランディング(強行着陸)で自己責任を貫徹させるべき。ソフト・ランディング(軟着陸)は暴挙である」との声が出ていたが、結果的には田中の先見力に満ちた大英断に軍配が上がったということだった。
そこで、田中のこうした「発想」の根源とはどういうものかについて、ここで見てみることにする。田中自身は、次のように語っている。
「私は土建業をやっていた当時、設計図を引くときはいつも初めからブッ書き、実線を引いてしまう。よく昔の書家の名人が木の看板に向かうとき、一気に書いてしまって、もし下の方に木が余ってしまったらその部分を切ってしまうという話があるが、私もまったくそれ式だ。まあ“ガリバー的発想”ということだ。物事を常に俯瞰的、鳥瞰的に見る。苦しい財政の中でも、頭を絞れば財源はいくらでも見つかるということです。
道路問題一つ取っても、専門家はいろいろ言うが結論はなかなか出ないね。簡単なことです。道路がどれだけの広さが必要かをはじき出すには、実際に車やオートバイを置いてみりゃいい。下水道分を取ってみりゃいいことだ。地価にしても同じ。建物を2階建てから6階建てにすれば、地価は3分の1に下がる。10階建てなら5分の1に下がる。簡単なことです。どんな本を読み、議論してもダメだ。一番の早道は何か。それが分かっていない。“発想の転換”ということだ。逆に考えてみればいいんです」
この地価の話、田中の40年ほど前のそれだが、今から10年ほど前にようやく国交省がこの田中の発想に“追随”、都市の地価高騰問題から「容積率」の緩和に踏み切ったものだった。
人が動く! 人を動かす! 「田中角栄」侠(おとこ)の処世 第38回
2016.10.10 10:00
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