【不朽の名作】膨大なエピソードをコンパクトに詰め込む絶妙さに注目「学校」

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【不朽の名作】膨大なエピソードをコンパクトに詰め込む絶妙さに注目「学校」

 1993年に公開された山田洋次監督作品の『学校』。日本アカデミー賞の最優秀作品賞をはじめ、数々の賞を受賞した作品で、現在ではおそらく小中学校の道徳の授業などでも使われているであろう同作の、あらすじをいまさら紹介しても仕方ないだろう。という訳でここでは、同作の作品構成の素晴らしさについてちょっと紹介したい。

 この作品は、夜間中学校を舞台に、生徒が抱える挫折や苦境が描かれる。クラスの担任のクロちゃんこと、黒井先生は西田敏行が演じている。他のキャストは、中年になるまで文字が読めなかったイノさん(田中邦衛)、昼間は清掃会社に勤務し、不真面目だがムードメーカーのカズ(萩原聖人)、焼肉店を経営する在日コリアンのオモニ(新屋英子)、元不登校児のえり子(中江有里)、シンナーに手を出し一度心身共にボロボロとなったみどり(裕木奈江)など、夜間中学ということで年齢も価値観も様々な7人の生徒が揃う。

 この7人と主人公クロちゃんのキャラクター性や魅力を、128分という限られた時間で、ひと通り描写しきっていることが、この作品の優れている点だ。その情報量は、普通は1クールのドラマでやりそうな容量だろう。では、そんな膨大な話をどうコンパクトに収めているかというと、前半のオムニバス形式の描写に秘密がある。

 まず、同作では、卒業直前の授業の自身の事について書いた「作文」という形で、各キャラの独白から個別エピソードの紹介に入る。これは教師ドラマに当てはめると、メインキャラとなる問題児にスポットを当てた個別キャラ掘り下げ回と言える。普通ならば、過度な回想を詰め込むと、話が飛び飛びになってしまうのだが、同作では、「授業」の枠内で語られていることなので、1人の回想が終わると、クロちゃんとの会話が入るなどして連続性を確保しており、視聴する側に混乱を与えないようになっている。そして、各エピソード中にクロちゃんを登場させることにより、クロちゃんの人となりもわかる親切設計なのも注目だ。

 回想で個別回を終了させた後、同作ではメインとなるエピソード、イノさんの病死を描く。実は個別の描写では、個々の問題を解決していないで終了させている回想もあるのだが、既に教師と生徒とのわだかまりは解けていることを、暗に証明しているシーンが大きく2つある。

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