世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第216回 プライマリーバランスという呪縛

| 週刊実話

 政府の未来投資会議に民間人(民間議員ではない)として出席している人材派遣大手『パソナ』取締役会長である竹中平蔵氏は、筆者が知る限り、経済財政政策担当大臣時代に三つの「指標の変更」を行い、日本経済のデフレ化の背中を押した。

 一つ目はデフレギャップ(需給ギャップ)や潜在成長率計算時の「潜在GDP」について、最大概念の潜在GDPから、平均概念の潜在GDPに変えてしまったことだ。潜在GDPとは、日本経済の労働力や設備(資本)がフル稼働した際に生産可能なGDPである。
 フル稼働、である以上、労働力でいえば「完全雇用」時に生産可能なGDPこそが、潜在GDPになるはずだ(これを最大概念の潜在GDPという)。ところが、竹中大臣(当時)と内閣府が、潜在GDPの定義を「過去の平均的な労働力、設備の稼働率において生産可能なGDP」に変更してしまったのだ(これを平均概念の潜在GDPという)。結果、わが国の潜在GDPは小さく見えるようになり、デフレギャップ(総需要の不足)が少なく計算され、デフレ対策が打ちにくくなってしまった。

 二つ目は日本経済の将来を予測する際の「マクロ経済モデル」について、先進国型である「需要重視モデル」から、発展途上国型の「供給重視モデル」に変えてしまったことだ。マクロ経済モデル変更により、日本はデフレという総需要の不足に苦しんでいるにもかかわらず、「緊縮財政」「供給能力拡大のための規制緩和」といった「インフレ対策」しか採れなくなってしまった。結果、日本国民は世界史上最長のデフレ、貧困化に苦しむ羽目に陥った。

 そして三つ目が財政指標として「基礎的財政収支(プライマリーバランス、以下PB)」という概念を持ち込んだことである。現在の安倍政権もこだわり続ける「2020年 PB黒字化目標」も、竹中氏が財政健全化指標としてPBを言い出したことに端を発する。
 そもそも、財政健全化とはPB黒字化でもなければ、政府の負債を減らすことですらない。政府の負債対GDP比率を引き下げることだ。政府の負債が増えたところで、それ以上に名目GDPが拡大すれば「財政が健全化している」と判断される。
 そして、政府の負債対GDP比率は、「名目GDPの成長率」「国債金利」「PB」という三つの指標の組み合わせで決まる。

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