ジャーナリスト・森健が突きとめた、名経営者・小倉昌男の「素顔」と「失敗」(前)

| 新刊JP
『小倉昌男 祈りと経営 ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの』著者・森健さん

第22回小学館ノンフィクション大賞、ビジネス書大賞2017・審査員特別賞、そして第1回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞と、トリプル受賞という偉業を成し遂げた『小倉昌男 祈りと経営 ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの』(小学館刊)。著者の森健氏は、主に若者支援やIT界隈に詳しいジャーナリストとして活躍し、幾多の著作もある。

そんな森氏は、本作において丹念に取材を進めながら小倉昌男(1924-2005)という稀代の名経営者の素顔に迫っていく。

小倉氏といえば、ヤマト運輸の社長として宅急便というシステムを築き上げた“宅急便の父”として知られ、著書『経営学』は経営者のバイブルとして読み継がれている。晩年には私財46億円を投じ、福祉財団を立ち上げ障害者支援に乗り出している。また、クリスチャンとしても有名だ。

傍から見れば完璧な名経営者である。しかし、森氏が疑問に思ったのは「なぜ46億円もの巨額の私財を投じて障害者支援に乗り出したのか」ということだった。そして小倉昌男を知る人々に話を聞いていくうちに、予期せぬ場所へと展開。そこにあったのは一人の父親としての小倉昌男の姿だった。

新刊JPでは森健さんの言葉を通して、その取材の様子をお伝えしていく。

(新刊JP編集部/金井元貴)

■ジャーナリストとして楽しんだ「小倉昌男の素顔を巡る旅」 ――今日はよろしくお願いします。森さんはもともと若者支援やIT業界に強いジャーナリストだと思うのですが、本作は小倉昌男という名経営者の評伝であり、クラシックな印象を受けました。

森:人物の評伝は『AERA』などの雑誌レベルでは結構書いているのですが、一冊分の文量を書くとなると、それなりの時間とエネルギーが必要です。また、人物ものは、尊敬できる人か批判したい人が対象でないと、長期間の取材をする際には持続が難しい部分があって躊躇していたところがあったんです。

ただ、自分の作家としてのキャリアの中で、人物のノンフィクションは書きたい気持ちはありましたし、候補も何人か考えていて、その中の一人に小倉昌男さんがいたんです。

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