◎快楽の1冊
『大隈重信、中国人を大いに論ず 現代語訳「日支民族性論」』
大隈重信著、倉山満監修 祥伝社 1500円(本体価格)
消費税の導入以外に抱えた闇があまりに深そうな竹下登。やたら水玉のネクタイを締めてた記憶しか後世に残らぬ海部俊樹。亡くなり方が気の毒な電話魔小渕恵三。K点越えの低支持率森喜朗。中国のご機嫌伺いばかりで宦官じみた福田康夫。ポンコツ民主党政権に幕を引いたことのみが功績の野田佳彦…。
直言すれば早稲田出身の総理大臣にはことごとくロクなのがいない。その点、石橋湛山は言論人として立派な硬骨漢だったかもしれないが、病気のため2カ月もたずに退陣とあらば判断の下されようがないだろう。では、その早大を創立した維新の元勲、大隈重信は果たしてどうか?
彼も首相として2度内閣を組織したが、現在の教育現場ではその政策や業績に対し、賛否でいえば、否定的な評価がほとんどではないか。その最たるものが悪名高い(とされてしまった)第一次大戦中のいわゆる“対支21カ条要求”だが、監修の倉山氏によれば、これとて当時大正デモクラシーの御本尊、吉野作造が擁護したほど、国際標準に照らし合わせてごくおとなしめの要求、いな流行りの言葉でいえば“希望”だったのだとか。
本書は大隈が自身の中国(正確には支那)観を歴史・文化・民族性にわたり大局的に口述した内容を、後に西武グループ創始者となる堤康次郎(やはり早大出身)が筆記し、1915(大正4)年に刊行した「日支民族性論」の現代語訳。中国に対する見方は手厳しいものがあるとはいえ、論調に決して差別的また侮蔑的なニュアンスはない。それどころか“日支”の表題通り、日本の文化も論じるに当たって、平安時代を“唐朝の文明を縮写しただけ”の“堕落”期と断じる件り、大隈の精神の根底にある武士気質が覗けて興味深い。
(居島一平/芸人)
【昇天の1冊】
権力者に逆らった“謀反人”だけにフォーカスした珍しい歴史本を紹介したい。ただ解説するだけでなく各人に「成績表」を添付し、反逆ぶりを採点している。それが『謀反の通信簿』(扶桑社/1100円+税)だ。
歴史上名高い謀反というと、平将門の乱や明智光秀の本能寺の変がまず思い浮かぶ。
本好きリビドー(175)
2017.10.23 17:00
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