大東大のモスグリーンの防御網に、ほつれは少なかった。
なかでも公式発表で「167センチ、88キロ」と小柄なFL、河野良太主将は、先頭に立って鋭いタックルを放ち続けた。対する青の東海大が擁する「184センチ、121キロ」のNO8、テビタ・タタフにぶっ刺さり、しばし倒れ、復帰し、そのままロスタイム突入の間際までフィールドに立った。
全てを終え、自分たちの生きざまをこう誇る。
「ディフェンスがしっかりできていて、相手に思うようにアタックをさせなかったことが勝ちにつながった」
11月18日、東京・江戸川陸上競技場。関東大学リーグ戦1部は5戦全勝同士のカードを迎え、前年度3位の大東大が2連覇中の東海大学に12-5で勝利した。
7点差で迎えたラストワンプレーの局面でも自陣ゴール前で守勢に回る。しかし、最後はモールを組みにかかる東海大が、ボール保持者とサポート役の位置関係を乱す。オブストラクションの反則を犯す。これでノーサイドとなった。
大東大は、25日の中大戦(東京・秩父宮ラグビー場)を棄権しなければ優勝となる。事実上のV決定に、河野は喜んだ。
「苦しい時間をしのげたのはチームの自信になる。一人ひとりが低く突き刺さって、2枚目(援護)も速く寄った。そこがよかったと思います」
大東大の防御は序盤から光った。例えば前半5分過ぎ。対するWTBのアタアタ・モエアキオラのカウンターアタックなどから自陣22メートルエリアに迫られながら、鋭いタックルとその後の起き上がりを繰り返す。河野主将の強烈な一撃も交え、最後は東海大の落球を誘った。
スコアが動いたのは続く18分だ。自陣10メートル線付近右で、それまで伍していたスクラムをPRの古畑翔がドミネートする。
木川隼吾スクラムコーチが「前半の最初の方のスクラムでは、ヒットの際のバインド(組み合う前のつかみ合い)でプレッシャーをかけられていた。試合中、フロントロー(最前列)に『もっと、そこで戦え』と言って、選手が修正して、ちょっと組みやすくなったみたい」と背景を明かすこの1本から、大東大は効果的なフェーズを重ねてゆく。
左へ、左へとラックを連取するなか、SHの南昂伸はとっさの判断を下す。