2016年の大統領選挙期間中から一貫して「アメリカ・ファースト」を叫び続けてきたドナルド・トランプ米大統領とその支持者にとって、3月22日に打ち出した中国との貿易赤字解消のための制裁関税の発表は面目躍如といったところだろうか。
今回の通商政策は、貿易赤字の解消という文字通りの意味合いの他に、国内の支持者へのアピールの意味合いもあるのだろう。その視線の先には11月の中間選挙があるのは間違いない。
というのも、アメリカ国内でのトランプの立場は決して安泰ではない。2016年からアメリカを揺るがしている「ロシア疑惑(ロシアゲート)」は、今でもトランプの最大の悩みの種だろう。
■トランプの「ロシア疑惑」とは何かすでに、日本でも広く報じられている「ロシア疑惑」だが、その焦点は三つある。
一つは、ロシアによる米大統領選挙への介入の可能性。
二つ目は、その介入自体がロシア単体による選挙妨害工作ではなく、対立候補だったヒラリー・クリントンの評判を落とすことを目論んだドナルド・トランプ陣営との数年にわたる共謀によって行われていたのではないかとする疑惑。
そして三つ目は、この疑惑を解明するための捜査をトランプが妨害したのではないかという、司法妨害の疑いである。
一連の疑惑の発端となったのは、元イギリス秘密情報部(MI6)の工作員・クリストファー・スティールによるメモで、各国を震撼させた「スティール報告」である。このメモには、プーチンがトランプを数年前から支援していることや、トランプを恐喝できるだけの弱みを握っていること。そればかりではなく、ヒラリー・クリントンの弱みとなる情報も収集していることなど、トランプに関する疑惑の根幹となる情報が綴られていた。
『共謀 トランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ』(ルーク・ハーディング著、高取芳彦、米津篤八、井上大剛訳、集英社刊)では、英『ガーディアン』紙の海外特派員であり、モスクワ支局長も務めた著者が、ロシア関係者への取材やトランプを取り巻く人物の調査を通じて、「スティール報告」がトランプの言うような「与太話」ではないことを裏付けていく。