弘兼 加藤九段は14歳から77歳まで現役で活躍されました。例えば、70歳を過ぎてから、自身の老いを意識したことはありませんでしたか。
加藤 ありませんね。
弘兼 盤面を「読む」力も変わらない?
加藤 まったく。
弘兼 すごい。体力的にはどうですか。
加藤 どれだけ長い試合でも疲労困憊したことはないです。私の場合、体力や気力の限界で引退したわけではありません。将棋界の「制度」でいられなくなっただけですので、それがなければずっと戦い続けていたでしょう。
弘兼 確か、棋士で最年長でしたよね。
加藤 最高齢対局と最高齢勝利記録を持っています。
弘兼 そこまで元気でいられる秘訣はどこにあるのでしょうか。ちなみに、お酒やたばこは。
加藤 たばこは吸いませんし、お酒はたしなむ程度ですね。いろんな理由があるとは思いますが、まず信仰を持っていることは大きいと思います。どれだけ忙しくても1週間に1回はミサに行っています。
弘兼 なるほど。
加藤 あとは食事を3食しっかり取り、睡眠も取り、無理はしないことです。性格が前向きなこともよいのかもしれませんね。
弘兼 プラス思考ですね。
加藤 プロになってから、試合の前日に負けると思ったことは一度もありませんし、負けても自分が弱いからだとは思ったことはありません。
弘兼 常に「勝つ」ことを意識する、ということでしょうか。
加藤 そうです。トンネルの先には必ず明るい光が見えてくる、と確信しています。