【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第5話

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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第5話

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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第4話

文政七年 正月  (5)

吉原遊廓を出た国芳は、夜道を駆けた。

提灯を借りずとも月が澄んで路(みち)がひどく明るい。

蛇行する衣紋坂を奔馬の勢いで駆け上がり右に曲がると、葉のない見返り柳の枝が男の後ろ髪を引くようにさわさわと舞い上がった。

歌川広重「江戸名所新吉原日本堤見返柳」ボストン美術館蔵

歌川広重「江都名所 吉原日本堤」ボストン美術館

八丁堤の土手は、百六十もあるという葭簀張(よしずば)りの水茶屋の丸提灯で左右をほのぼのと照らされていた。

国芳は近道のために編笠茶屋の角で曲がり、畔に何度か転げ落ちそうになりながら広大な田の間を駆けた。浅草寺雷門、助六の花川戸から七十六間の吾妻橋の板を踏みならして東岸に渡る。普通なら舟に乗っても良いような距離だが、金がないためにひたすら走って南へ下った。

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