【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第6話

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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第6話

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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第5話

文政七年 春(1)

夢のような話だと思う。

朝目覚めたら、夕べには何もなかった窓の外に艶麗な桜の大樹が咲きすさんでいるなんていうのは、娑婆の女にとっては夢物語に違いない。しかしこの吉原の廓内(なか)では、毎年三月になると当たり前にそれが繰り返される。

(目が覚めても、夢の中みたい)

みつは半ば切なく、半ば誇らしくそう思っている。それが幸せな事なのか不幸せな事なのか、生み落とされた時からこの吉原遊廓に生きるみつには分からない。

卯の刻。

小夜がほのぼのと明け始めるこの時刻、みつは毎朝帰り客に添って見送りに出る。付き合いの浅い客は店の間口まで、馴染みなら五丁町を抜けて大門までゆく。京町一丁目から仲之町に出る木戸門を潜った時、目の前に広がる光景にほうっと嘆息した。この時期には、仲之町のあちこちから感嘆のため息が漏れ聞こえてくる。

(なんて、贅沢な眺め)

歌川広重「東都名所新吉原五丁目弥生花盛全図」国立国会図書館蔵

青竹の欄干に囲われた満開の桜が、水道尻から大門口までまっすぐ仲之町の中央を貫く。その数、一説に数千本。

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