EUは6月22日、米国による鉄鋼・アルミニウム輸入制限への報復措置として、米国製品に3600億円規模、最大25%の追加関税を課した。
追加関税の対象は、タバコ、ピーナッツバター、オートバイ、ウイスキー、ジーンズと、トランプ大統領の支持基盤に製造拠点を置く製品を狙い撃ちにしている。
EUが抱えるトランプ大統領への嫌悪感は明らかだ。これに対して、トランプ米大統領は即座にEUから輸入される自動車に20%の関税をかけると、ツイッターで再報復を示唆した。世界はいま、まさに貿易戦争の入り口に立っていると言えるだろう。
1929年の世界恐慌のあと、米国のフーバー政権は、自国産業を守るために輸入品に高率の関税を課した。それに対抗して世界中が保護主義に傾き、ブロック経済化した。そのことが、第二次世界大戦が始まる大きな原因になった。その反省から生まれた戦後の自由貿易体制を、トランプ大統領は破壊しようとしているのだ。
そもそも、今年3月に米国が通商拡大法232条に基づいて、鉄鋼とアルミに追加関税を課す輸入制限を発動した理由は何か。それは、中国を念頭に鉄鋼とアルミを海外に深く依存することは、安全保障上の問題が大きいという認識があったからだ。
日本は当初、同盟国である日本から鉄鋼やアルミなどを輸入することは、安全保障上の脅威にはならないので、日本が対象国になることはないとみていた。ところがトランプ政権は、日本を当初から対象としてきたのだ。
日本は対象から外すように米国に要請したが、取り合ってもらえず、個別品目での適用除外に戦略を切り替えた。だが、これまでのところ除外が認められたのは、不二越の米国法人、JFEスチール、日立金属などごく一部にとどまっている。
実は、EUは米国の鉄鋼・アルミ追加関税による損害を8100億円と推計し、今回の報復措置を除いた4500億円分については、今後、WTOの紛争解決手続きを経て、米国の違反が明らかになり次第、報復に踏み切る構えだ。
ところが、EU、中国、ロシアが相次いで米国に報復を打ち出す中で、日本だけが米国への報復の構えを一切見せていない。私は、こうした報復関税合戦が、世界経済の失速に直結することから、報復を課さない日本政府の姿勢は正しいと思う。だが、日本がWTOに提訴しない姿勢は間違っている。
今回の米国の行動は、明らかにWTOのルールに違反している。米国産業の中にも、トランプ政権のやり方に異議を唱える声はたくさんある。輸入した鉄鋼やアルミを原材料として使っている米国企業にとっては、コスト高になるうえに、消費剤の多くを海外に依存している米国にとって、高関税は物価上昇に直結するからだ。
日本が、EU、中国、ロシアと足並みをそろえて訴えれば、WTOは無視できない。それをせずにアメリカの顔色ばかりうかがう通商政策を続けていると、日本は世界でのプレゼンスを完全に失ってしまうだろう。
トランプ政権の“パワハラ”には、毅然と対処すべきなのだ。
森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 トランプ保護主義に毅然と対処を
2018.07.12 08:00
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