昨年5月19日の衆議院法務委員会で、自民党、公明党、日本維新の党の賛成多数で『テロ等準備罪』を新設する組織犯罪処罰法改正案が可決した。民進党、共産党などの野党は廃案を訴えていたが、与党側は強行採決し、同年7月11日、同法は施行された。東京五輪を2年後に控え、テロ対策を万全に施す必要があるのは確かだが、その方策を巡っては真っ二つに割れている。
「自・公・維新案に反対した民進党の対案は、フランスのテロ対策に近い考え方であるのに対し、与党案はイギリスに近い。ともにデモクラシーの総本山を自認する両国ですが、テロ対策の在り方について、全く異なる手法を採っています。イギリスのロンドン市内やヒースロー空港には自動小銃を持った武装警官の姿がほとんど見られませんが、フランスのパリ市内やシャルル・ド・ゴール空港には多数の警官や武装兵がそこらじゅうで警戒している。このようにに対照的です」(危機管理アナリスト)
イギリスではテロを警戒するにあたって“国民すべてを容疑者として扱っている”ということだ。同国の警察・情報機関は、国内外に網の目のように情報網を張り巡らせ、少しでも不穏な動きをする人物を発見すれば、即座に監視し、逮捕できる体制が確立されている。
「平均的なロンドン市民は1日に約300回監視カメラに写っています。イギリス国内には約420万台の監視テレビ(CCTV)が設置されていて、これは世界最大の台数というだけでなく、この監視カメラが捉えた情報に携帯電話やPC、ラジオ、電子切符『オイスター』などから得られるさまざまなデジタル情報を組み合わせ、特定の人物の所在を高精度に追跡できるデータベースを構築しているのです。またイギリスの警察は、逮捕した人物からDNAサンプルを取りますが、無罪釈放されても、当該人のサンプルはデータベースから消去されません。簡単に言うと命を守るためなら人権は二の次という図式です」(同・アナリスト)
対するフランスのテロ対策は、軍隊・警察の武装強化である。日本の場合、街中に自動小銃を持った警官が立つことなど想像できないし、そんな予算もない。メディアも許さないだろう。
そうとなると、監視カメラの設置に対しても「人権蹂躙」を言い出す日本の社会の中では、テロ等準備罪の施行下でもイギリスのような備えが実現できるとは思えない。日本の政治風土の中では、民主主義を厳格に守り、人権第一でテロを未然に防ぐことなど絵空事なのだ。
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