ロシアのプーチン大統領から突然に出た平和条約締結の提案。狙いがどこかにあるかは不明だが、日本がこれだけは押さえておかなければならない点は、日露300年の歴史の中で、ロシアは常に日本に敵対し、かつ裏切ってきたこと。日ソ不可侵条約の一方的破棄、そしてシベリア抑留など、第2次世界大戦の被害を忘れてはならないということだ。
11月14日、シンガポールで、安倍晋三首相とプーチン大統領との23回目のトップ会談が開催された。15、16両日の各紙1面の見出しはおおむね、今後の平和条約締結に向けた交渉は1956年10月の「日ソ共同宣言」を基礎にして加速させることで合意したというものだった。
安倍−プーチン会談は、記録係を同席させず通訳のみで行う首脳会談で行われたため、会談内容すべては分からない。各紙の中で産経新聞のみが「日露平和条約3年内締結へ」「来年6月の合意目指す」と具体的な情報を盛り込んだ見出しを掲げた。
今回の安倍−プーチン会談が異例だったのは、秋葉剛男外務事務次官を同行・同席させたことだという。
「普通、首相外遊には外務審議官(政務担当)が同行するのが慣例です。だが今回は、条約課長、国際法局長を歴任した条約畑の秋葉次官をあえて同行させたことに何か意味があるのでしょう。ロシア専門家・識者だけではなく外務省大物OBにも4島一括返還に固執する者が少なくありません。そうした勢力に対する抑止力として、秋葉次官を連れて行ったのは1つの理由でしょう。ただ安倍−プーチンの会談後に、秋葉次官は谷内正太郎国家安全保障局長とともに別室に呼ばれています。しかもロシア側からはラブロフ外相とウシャコフ大統領補佐官が入っています。つまり安倍首相は、日露平和条約締結と北方2島先行返還の交渉を同時並行で進めることにかじを切ったのではないでしょうか」(国際ジャーナリスト)
そして「段階的返還論」(2島先行返還も含む)の鈴木宗男新党大地代表が、11月8日に官邸で安倍首相と会談した際に伝えた「(2島返還で)北方4島元島民の多くの賛同を集めた」という要望の提示が首相を後押ししたのではないかという見立てもある。
「どうやら安倍首相はこれに乗ったのではないか。ただ『領土問題』を棚上げにして『平和条約』を結ぶのは、尖閣列島の領有権を棚上げにして日中友好条約を結んでしまった轍を踏むことになりかねません。2島が帰ってきたところで毛ガニや花咲ガニが口に入るくらいです。それよりロシアは、ビザ無しで入国させろと言い出しかねない。かつて野田佳彦元首相はプーチンに脅され、ロシア人500人をビザ無しで日本に上陸させたことがありましたからね。ロシアの経済力は日本の25%程度の経済小国です。ただしエネルギー大国ですから、この点を徹底的に利用することだけを念頭に置いて交渉すればいいのでは」(同)
カニ好きだけが喜ぶようなことがあってはならない。
『北方領土2島返還』の成果――まさかカニだけ!?
2018.11.23 06:00
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