人口1000人ほどのポルトガルの田舎町・ガルヴェイアスにある日突然爆音が鳴り響き、巨大な物体が落ちてくる。以来、村は耐えがたい硫黄の匂いに包まれることになった。この事件の後も一見変わらないように見える村人たちの日常。その様子を、村の犬たちはじっと見つめる。
現代ポルトガル文学の代表的作家・ジョゼ・ルイス・ペイショット氏初めての邦訳作品『ガルヴェイアスの犬』(新潮社刊)の話である。ポルトガルに実在する土地を舞台に、村人たちの語りや記憶が積み重なり一つの大きな像を結ぶ。豊かで人間臭く、そしてどこか懐かしさも感じさせるこの作品について、11月に来日したペイショット氏にお話をうかがった。その後編をお届けする。(インタビュー・記事/山田洋介)
ペイショット:今名前が挙がった二人は私にとってとても大事な作家です。
文学の膨大な歴史の中で書かれたことに対して新しい作家が何か付け加えるのはものすごく難しいことです。しかし、フォークナーもマルケスも、いずれもが「土地と自分の関わり」を書いています。それならば、私自身が実際にかかわった土地について書くことで自分以外誰も書いたことがない小説が書けると思えたんです。
もちろん文学的野心もありましたから、自分のこれまでの小説とは違うやり方に挑戦しました。小説の構造を変えて、語りを断片的なものにしようと試みています。それをやってみようと思えたのはあの二人の小説を読んできたからだと思いますね。