世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第308回 「いざなぎ超え景気拡大」の真実

| 週刊実話

 2018年12月13日、内閣府の「景気動向指数研究会」は、’12年12月に始まった景気の拡大が、少なくとも’17年9月まで続き、高度成長期の「いざなぎ」の期間を越えたと認定した。「景気拡大いざなぎ超え!」などと言われても、実質賃金が下がり続け、かつ実質消費も縮小している中、違和感を覚えた方は少なくないだろう。

 というわけで、本稿で「いざなぎ超え景気拡大」の真相について明らかにしたい。

 まず、ポイントは「景気」という言葉である。景気とは、そもそも何なのだろうか。景気とは、辞書的に言えば「売買、取引など経済活動全般の動向」となるが、実に抽象的な単語だ。ちなみに、景気という言葉は、元々は中世の和歌において、景色、雰囲気などの意味合いで使われてきた。

 これが例えば、「所得」「経済成長率」などであれば、実質賃金や実質GDPのデータを見れば、状況が一発で分かる。それに対し「景気を図る指標」は存在しない。そもそも、景気という言葉が抽象的である以上、単一指標で計りようがないのだ。

 それでは、内閣府はいかにして「景気の拡大」「景気の後退」を判断しているのだろうか。にわかには信じがたい、真実を語ることにしよう。

 景気の気は、気分の気である。あるいは、雰囲気の気だ。気分を数値データで計ることなど不可能だ。とはいえ、さすがに内閣府としても、データなしで「景気拡大」「景気後退」を決定することはできない。というわけで、複数の経済指標を用い、景気の拡大や後退の定義付けをしている。

 景気判断に採用される経済指標は頻繁に入れ替わるのだが、とりあえず直近では、
●生産指数(鉱工業)
●鉱工業用生産財出荷指数
●耐久消費財出荷指数
●所定外労働時間指数(調査産業計)
●投資出荷指数(除輸送機械)
●商業販売額(小売業 前年同月比)
●商業販売額(卸売業 前年同月比)
●営業利益(全産業)
●有効求人倍率(除学卒)
 の9つが、景気の拡大、あるいは後退の認定の際に用いられている「ヒストリカルDI」の一致指標になる。

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