「私、ちゃんとした化粧品買ったことなくて。一緒に買いに行くのはどうかな、百貨店とかに」
大好きな親友よろしくかわいいガールからお誘いを受けたのは、1月のことだった。
かわいいガールはカラフルな餃子を食べに行く約束だとか、あずきゼリーを食べに行く約束だとか、そういうキラキラした楽しい約束を持ってきてくれる。彼女からの連絡が来ると、心がもれなくぱあああっと明るくなる。彼女との約束はなんだってうれしい。
だけど、今回は百貨店で化粧品を買う約束だ。自意識と羞恥の記憶が脳内で煮えたぎる。二つ返事でYESとは言えなかった。
■コスメ選びは感情労働
何かをほしいと思うことは恥ずかしい。コスメ選びはその最たるものだ。自分を美しく見せたいという願望が裏に潜んでいる。化粧を施した自分を想像していいなと思い、レジにすごすごと持って行き、「私はこれがほしいです」と意思表示をしなければならない。
コスメ選びは感情労働。お金は払うから無人レジにしてくれ。雑多な店や薬局ならまだマシ。トイレットペーパーやら食器用洗剤と一緒に、小さなルージュをカゴの一番下に滑り込ませ、そんなにほしくないような顔をして買うことができる。雑多な店でコスメを買うのは許される気がする。誰にもダメって言われてないけど。
それに百貨店だけは無理。絶対に無理。煌びやかで明るい店内を、まるで洞窟の中を進むように肩をすぼめて恐る恐る歩き、店先に立つ美容部員と視線交わらせたらロックオン。何かお探しですかと聞かれて「別に化粧品がほしいわけじゃないんです」と言って、ぽかんとされる。そりゃそうだ。気が動転して泣きたくなり「また来ます」と言ってその場から立ち去っては二度と来られない場所をまたひとつ増やす。
化粧が嫌いなわけじゃない。百貨店でコスメを買うのも憧れる。ただ、なんとなく気後れしてしまう。だからスキンケアや化粧をしている様子をSNSにアップする女の子たちが羨ましくも妬ましい。
「お化粧ちゃんとしててすごいなぁ~、私なんてお化粧全然わからなくて~」と言ってしまうのはマウントというより自己防衛。