年中から小学生までを教育現場で見ている筆者は、さまざまなケンカの場面に遭遇します。大人なら「そんな言い合いにエネルギーを使うなんてもったいない…」と思えるようなことでも、子どもにとっては真剣そのもの。あるとき、ケンカの火種はどこへやら、いつしかよくわからない討論になってしまった男の子2人がいました。
年長のYくんが、砂場で大きな山を作っていたときのこと。同じく年長のKくんが「ぼくもやまをつくりたい!」とやってきました。するとYくん。「ダメだよ。ここはあそぶのにきょかがひつようなんだ。さっき、ぼく、あっちにいるOくんにきょかをもらったんだよ。だから、ダメだよ」と拒否。もちろん、Kくんは怒って歯向かいます。
「なんだよ、いいじゃないか! Oくんはここにいないしさぁ」。そこでYくんがポロッと「ここではぼくがおうさまなんだ」と呟きました。先ほどOくんと遊んでいた際にYくんは王様に任命され、この砂場を守る役割を任されたようです。そばで見守っていた筆者は、てっきりKくんが砂場遊びをしたいと主張するのかと思ったのですが、違いました。
「おうさま……? どういうことだよ! それって、せかいじゅうの、たったひとりのおうさまってことかよ!?」と顔を真っ赤にして聞くKくん。Yくんは何を聞かれているのかよくわからず沈黙。「せかいに、いったことあんのかよ!?」とKくんが続けます。「ないよ……」と小さい声で返事をするYくん。「そんなの、おうさまじゃねー!!!」と、まるで頭から湯気が出ているようなKくんの憤りでした。
「だって、だって、Oくんがいったんだもん。ぼくはしらないよ。もんくはOくんにいってよ」
「は? せかいにいっていないのに、うるせー!」
「ぼくはわるくないもん! いわれたからおうさまなだけだもん!」
砂場での山作りはどこへやら。論点は「王様たるか否か」一点に切り替わりました。どんな決め方であれ、王様に任命してもらえたことに誇りをもっているYくんは、王座を譲るわけにはいきません。一方、認められない王様の言うことに、黙って従うわけにはいかないKくん。