世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第339回 自己実現的予言

| 週刊実話

 前回、日本の経済成長、国民の所得拡大を妨げている代表的な「社会現象」として、「合成の誤謬」について取り上げた。実は、日本をむしばむ社会現象は、合成の誤謬以外にも下記のように複数ある。

●自己実現的予言
「日本は経済成長しない」と誰もが思い込み投資を減らすと、実際に日本経済が成長しない。

●集団的記憶喪失
人手不足、供給能力不足は「生産性向上のための投資」で解消するという資本主義の記憶を国民全体で忘れ去り、「人手不足なら移民受け入れ」と、明らかに間違った解決策を当然として受け入れてしまう。

●認識共同体
例えば、経済産業省の官僚が「日本はキャッシュレス決済が普及しておらず、遅れている」「法人税を引き下げなければ、企業が日本から出ていく」といった話“しか”しない財界人と付き合い、日本国民を困窮させる政策“のみ”が議論される共同体に属することに安心感を覚え、キャッシュレス決済や法人税減税を推進しようとする。

●センメルヴェイス反射
財務省の緊縮財政で日本国民が貧困化し、小国化しているのは明らかであるが、そのあまりの罪深さに、財務官僚が「見たくないものは見えない、聞きたくないものは聞こえない」認識バイアスに陥り、財政破綻論を論理的に否定する勢力を攻撃する。

 などなど…。

 筆者が特に厄介と考えるのは、自己実現的予言だ。資本主義とは、そもそも供給能力を生産性向上目的の投資で補うことで成長する経済モデルだ。国民や政治家、企業経営者が「日本は経済成長しない」と勝手に決めつけ、投資を抑制している以上、日本が経済成長するはずがない。

 もっとも、さすがに何の理由もなく「日本は経済成長しない」と思い込むことはできない。というわけで、増税否定論に利用されているのが人口減少である。
「日本は人口が減っているのだから、経済成長するはずがない」

 上記レトリックは、それなりに説得力がある。とはいえ、この手の主張をする人は、日本以外の事例については一切、口にしない。恐らく、真面目に諸外国のデータを見た経験すらないのだろう。

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