image credit:photo by youtube
トリックアートの一種に、水平方向と垂直方向を入れ替える、というものがある。例えば、床に実物大の塔の絵が描いてあって、そこに這った状態で写真を撮ると、誰でもお姫さま(あるいは王子さま?)を助けに来たヒーローになれる、という仕組みだ。
というわけで、この写真も石畳の上にヤギを寝かせて撮ったんだ…なんてことはない。これは正真正銘、ほぼ垂直のダムの壁面なのだ。そしてそんな場所に平然とたたずんでいるのは、アルプス・アイベックスである。
その名の通り、普段はヨーロッパアルプスの斜面に暮らしているアイベックスだが、時にはこうしてダムに現れることも。それは単なる物見遊山ではなく、生存をかけた理由があるのだそうだ。
この動画は、スイスとの国境付近、北イタリア・ヴァッレ・アントローナ自然公園のチンジーノ・ダムに集まるアルプス・アイベックスを撮影したものだ。
Alpine Ibex on Dam - hybridwildlife.com
・アルプスの高地に暮らすアイベックス
アルプス・アイベックスの主な生活領域は、ヨーロッパアルプスの切り立った、岩だらけの険しい崖だ。標高2,000m~3,000mにある樹木限界線のさらに上である。
だが、アイベックスもずっとそこに留まっているわけではない。動物である以上、エサを食べずには生きていかれないからだ。
春から夏にかけては、アイベックスは樹木限界線より下に降り、緑豊かな緑草高地や針葉樹林帯でエサを食べる。