田中角栄と同期、昭和22(1947)年4月の戦後第2回目の総選挙で初当選した中曽根康弘は、一貫して政界山脈の頂上、首相の座を目指した人物であった。
一方の田中が、戦後復興のための道路、住宅などの法律整備(議員立法)に汗をかく中で、中曽根はあらゆるパフォーマンスのチャンスを見逃さず、国会内外、国民の耳目を集めることに大きなエネルギーをつぎ込んだのであった。
陣笠議員の頃は「日の丸愛国運動」なるものをブチ上げ、新聞には「首相公選論」の推進を投書するといった具合で、この手のパフォーマンスは数えきれず、すべからく自ら首相への“近道”を模索したものにほかならなかった。
戦後の歴代首相のうち、こうしたパフォーマンスの年季の入り方はダントツで、訪米した折に、当時のブッシュ大統領の前でロックギターを弾くマネをしてみせ、米国内から失笑を買った小泉純一郎元首相などと比べれば、“大人と子ども”の違いがあった。
派手なパフォーマンス全開の一方、その“風見鶏”ぶりもまことに機を見るに敏で、こちらも全開、常に時の権力の行方に目をこらすのだった。ために、どういう立ち位置をとったら得策か、小派閥を率いながら、以下のような目まぐるしい「政界遊弋史」を刻んだものであった。
もともと中曽根の自民党での親分は、農林大臣などを歴任した実力者の河野一郎(現・防衛大臣の河野太郎の祖父)率いる河野派だったが、河野の急逝を機に河野派の大半を糾合して中曽根派を旗揚げした。
時に、佐藤栄作政権が発足した直後は、中曽根いわく「河野先生の佐藤批判を私も貫く」としていたが、次第に「反佐藤」ゆえの冷や飯期間の長さにシビレが切れたか、その第2次内閣では、運輸大臣のニンジンをぶら下げられて飛びついてしまった。
中曽根派内からは「変節ではないか」と不満の声が多数出たが、ここで中曽根いわく「犬の遠吠えでは効果がない。刀の切っ先が相手に届く必要がある。佐藤さんのために入閣するのではなく、政治家として国家国民のために働くためである」とした。
しかし、派内の不満は収まらずの中、佐藤首相は政権基盤を固めるため、なお中曽根の懐柔策に出た。
田中角栄「怒涛の戦後史」(15)元首相・中曽根康弘(中)
2019.12.30 06:00
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