本好きのリビドー

| 週刊実話
本好きのリビドー

◎悦楽の1冊『首』北野武 角川書店 1600円(本体価格)

★世界のキタノが紡ぎ出す歴史長編

 遂にNHK大河ドラマの主人公に明智光秀が選ばれた今年。既にОA前から本能寺の変にまつわる関連書籍の出版も花盛りな模様だが、一味違った強烈な彩りを添えるのが本書だ。

 もうのっけから、いわゆる歴史小説の常識、ないしお約束めいたルールなど完全無視の自己流、滅茶苦茶な語り口が楽しい。一応、時は文禄年間、秀吉の治世の頃、その御伽衆(お抱えの噺家的存在)として名高かった曽呂利新左衛門が、御前公演よろしく本能寺の舞台裏、その真相を講談(否むしろ漫談?)調に解き明かしてゆく…という筋立てではあるものの、なにしろ「三好三人衆というのはムード歌謡の歌手とかではなくて、」なんて一行がいきなり目に飛び込んでくれば、内心当たり前だよ! と突っ込みつつも、読者には曽呂利の語りか、芸人ビートたけしの地のしゃべりか区別がつかなくなってくる。

 信長とその家臣・光秀や秀吉、あるいは盟友である家康との間に繰り広げられる駆け引き、心理戦の描きぶりは北野映画さながら、戦国版『アウトレイジ』そのもの。

 だが、尚もサービス精神旺盛な著者は、備中高松城をめぐる攻防戦で、織田方の黒田官兵衛と和睦の条件を話し合う場面で、毛利側の安国寺恵瓊に「他所から来た侍どもの風下に我らは立たんで」「血の海になるけえの!」と広島弁で叫ばせるのだが、これがニクい。

 言うまでもなく「仁義なき戦い・頂上作戦」で小林旭演じる武田明が、神戸から来た大組織の幹部役の梅宮辰夫に向かって切る啖呵、「広島極道は芋かも知れんが、旅の風下に立ったことは一遍もないんで」の見事なパロディーに拍手を。やはり本作も大画面で観たいもの。
(黒椿椿十郎/文芸評論家)

【昇天の1冊】

 昨年、大晦日に報道されたブッ飛びニュースが、元日産CEO、カルロス・ゴーン氏の国外逃亡だった。チャーター機を使い、大きなケースの中に隠れて税関をすり抜け日本から出国するという、『スパイ大作戦』さながらの脱出劇だったという。

 元米軍特殊部隊やレバノンが国ぐるみで関与したなどとうわさされているが、真相は追々明らかになるだろう。

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