社会学者・副田義也は「家族を、ひとの誕生する場として語るほどには、ひとの死亡する場として語らないのはなぜだろうか」と述べている(1)。孤独死、無縁社会が叫ばれる昨今ではあるが、多くの人は何らかの形で家族の中にいる。そしてほとんどの人は死に至る過程で病を患う。その時、家族とはどのような存在であるのか。「死亡する場」としての家族とは。
■親との物理的な距離が離れれば、否が応でも愛情は削がれていく
かつての家制度のもとでは、親・子・孫の三世代がそれぞれ家族の中で安定した地位・役割を与えられ、身辺介護などは家族が責任を負うことが当然の義務と考えられていた。儒教的倫理により教化された「孝」の意識が家族扶養の態勢を支えていたのである。それが核家族化に代表される家族制度の移行により「家」の継承観念や扶養責任意識が衰微していった(2)。
家族制度の移行という問題には様々な要因があるが核家族化に絞って考えるなら、距離の断絶は親子の情を希薄にする要因であると思われる。日々の生活に追われているうちに遠くの老親の存在感は薄くなる。介護が必要な時になってその存在が現実味を帯びてくるという状況にあっては、介護への意欲が奮わず病院・施設まかせになってしまうのは必然だろう。
■親の介護の対価は相続だったが、長寿化による介護期間の延長が子供を疲弊させていった
家の跡継ぎが親の介護を引き受けることは、家督相続という報酬を獲得するための対価であった。また医療技術や生活水準の低い時代には、介護を要する期間もおのずと長期に渡ることはなかった(1)。
しかし現代は医療技術の発達、衛生環境の向上などにより長寿化が進み、引いては介護期間を延長させる結果となっている。そして介護による疲労や経済的圧迫は、やがて家族の安否よりも、そのような状況からの解放を願うまでになってしまうこともある。それは状況によっては家族の死を願うまでに至ることもあるだろう。疲労や経済的圧迫が家族の態度に変化を及ぼすことは予想されうる事態である。
親の介護は子供がするが当たり前だった時代に育った子供とそうでない子供
2020.02.21 19:00
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