バナー題字・イラスト/寺田克也
「まさか疫病でこんなことになるとは思っていなかったですね」
単刀直入に新型コロナウイルスについて聞くと、実戦性と安全性を重視した武道スポーツ「空道」の普及に勤める大道塾の吉祥寺支部・飯村健一支部長は、気持ちよく汗を流したあとはおいしいビールを飲んでいた平穏ながら充実した日々を懐かしむ。
「この騒動が起こってから自宅でしか飲まなくなりましたからね」
飯村といえば、現役時代は卓越した打撃技術を武器にKOを量産した格闘家として知られている。活躍のフィールドは大道塾だけにとどまらず、本場タイでムエタイに挑戦したこともある。その技術は現役選手からも一目置かれており、現在もプロ格闘家のセコンドに就く機会は多い。
その一方で作家・夢枕獏とも親交が深く、吉祥寺支部の節目となる年度には夢枕獏プロデュースの記念大会「スック・ワン・イイムラ」が開かれる。出場選手は飯村とゆかりのある選手や元選手など多数。昨年開催された記念大会には青木真也(元ONEライト級チャンピオン)、佐藤嘉洋(元WKA世界ムエタイウェルター級チャンピオン)、T-98(元WKA世界ムエタイウェルター級チャンピオン)らが出場して大いに盛り上がった。
そんな飯村も中国で新型コロナウイルスが発生した当初は、それほど意識していなかったという。
「最初に耳にしたのは横浜に停泊したクルーズ船のニュースですかね。その時は対岸の火事のような感じで、何とも思っていなかった」
最初に「オヤッ!?」と思ったのは、大手のアスレチックジムで感染者が出て、休業するジムが出てきたあたりからだった。
「あれからジムや道場を閉めるところが出てきましたからね」
都内でも感染者が徐々に増えていく中、飯村は道場を開け続けた。