税務上適正額が問題になる役員の退職金については、平均功績倍率法で算定するのが一般的です。平均功績倍率法は、(1)退職する役員の最終報酬月額、(2)勤続年数、(3)の平均功績倍率の3つを掛け合わせた金額を退職金の適正額とする方法です。
この計算上問題になるのは、(3)です。(1)と(2)は数字が明確ですが、(3)のは平均の倍率と言われても明確な指標がありませんので、何倍にしたらいいのかよく分かりません。この平均功績倍率について、従来言われていたことは、取締役クラスであれば原則として3.0までなら問題がないということでした。とある判例で、「社長3・0、専務2・4、常務2・2、平取締役1・8、監査役1・6」と、社長についてこの倍率が示されたことがその根拠となっています。
■近年の動向は
しかしながら、近年はこの3.0倍は安心とは言えなくなっています。酷い場合には、功績倍率が1.9倍と、2倍すら認められなかった事例もあります。功績倍率と一言でいっても、同業他社の退職金の平均額から算定する「平均」功績倍率ですから、算定した割合が3.0倍を下回ることも当然にあります。
結果として、3.0倍なら安全とまでは言えなくなっています。
■国税職員の本音
その反面、税務調査で功績倍率の割合が問題になることは実際のところ多くはありません。なぜなら、国税職員は退職金の適正額などを原則問題にしたくないからです。
どういうことかと言うと、税務調査は納税者に自分の処理の誤りを認めさせ、その誤りを納税者が正す修正申告で決着をつけることが大原則となっています。明確な証拠を突きつければ、納税者も間違いを正すでしょうが、退職金の適正額がいくらか、明確な根拠はありません。平均功績倍率法はあくまでも判例で合理的な退職金の適正額の計算方法と認められたに過ぎず、その他の方法を採用したとしても、法令上問題はありません。
加えて、平均功績倍率を算定するには同業他社の状況を調べなければなりませんが、そうなると仕事が増えてしまうので、仕事をしたくない調査官は避ける傾向があります。
役員の退職金算定で功績倍率3倍が安全ではなくなってきている
2020.06.11 19:00
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