街を歩いていると、胸に「MARVEL」とロゴの入ったTシャツを着ている人を見かけることがある。「スパイダーマン」や「キャプテン・アメリカ」「アイアンマン」など、世界的人気を誇るマーベル・コミック(以下、マーベル)のロゴ入りTシャツである。
このマーベル、今でこそ世界的に知られているが、その誕生から今に至るまでの道のりは波乱万丈である。隆盛をきわめたコンテンツの衰退や、倒産危機からの巻き返し、創造性と収益性のジレンマ・・・。その苦闘の歴史は、今の企業やビジネスパーソンにとって役立つ示唆に富んでいる。
『MARVEL 倒産から逆転No.1となった映画会社の知られざる秘密』(チャーリー・ウェッツェル、ステファニー・ウェッツェル著、上杉隼人訳、すばる舎刊)によると、マーベル・コミックの始まりは、1934年に当時26歳だったマーティン・グッドマンが興した出版社「ニューススタンド・アンド・パブリケーション」まで遡る。
グッドマンは流行を取り込むのに長けた、優秀なビジネスマンだった。当時勢いのあった大衆雑誌に商機を見出し、新雑誌を次々と立ち上げたグッドマンは、読者に読まれる誌面を追求した結果、コミックに行き着いた。
すでに出版されたイラストつきのストーリーを買い上げて、コミックとして刊行する手法で、初のコミック『マーベル・コミック』を出版。たちまち人気となると、量産体勢に入り、オリジナルのキャラクター「キャプテン・アメリカ」を世に出すと、その人気は不動のものに。グッドマンの甥であったスタン・リーが加入しクリエイティブの中核を担うようになると、『マーベル・コミック』は全盛期を迎えた。
グッドマンが経営を担い、リーがクリエイティブを引っ張るこのスタイルは、1940年代から1960年代まで続き、ヒーローものやSF、ホラーなど様々なジャンルのコミックを世に出し続けた。「スパイダーマン」や「ハルク」といった現在でもマーベルを代表するキャラクターはこの時期に生まれている。