仕事において、意気込みと結果がかならずしもリンクしないのは誰もが感じているところ。
力んだり、気負いこんだりすれば、視野は狭くなるばかり。逆に、力を抜いて状況を俯瞰したり、課題や問題に抗うのではなく、あえて流れに身を任せてみると、思いのほかいい結果が出ることがある。
電通でクリエイティブディレクターとして活躍しながら高野山で真言密教を学び、阿闍梨の位を授かるという異色の経歴を持つ元井康夫氏の『「がんばらない」という智恵~自分でできる働き方改革~』(辰巳出版刊)は、力を入れるばかりでなく、力を「抜く」働き方を指南する一冊。
抗わず、戦わず、こだわらずに成果を出す。そんな働き方ができたら最高だ。今回はご本人にお話をうかがい、その秘訣を教えていただいた。
■人間はがんばるようにできている だからこそ知るべきこと――『「がんばらない」という智恵~自分でできる働き方改革~』は、普段仕事をしていてつい疎かになりがちなことがまとめられていてはっとさせられました。まず、この本でいう「がんばらない」の意味合いについて教えていただければと思います。
元井:この本でいう「がんばらない」にはいくつかの意味があります。1つは単純で「執着しないこと」です。何かに執着すると辛いですから、辛さをなくすには執着をなくすしかありません。これはよくお坊さんが言っていることです。
もう1つは、タイトルに「智恵」と入れた理由でもあるのですが、我々は「自然とがんばってしまう性質」があるんですよ。がんばるように作られているといいますか。
――それはすごくわかります。何もしていないと「何かやらないと」となりますよね。
元井:そうです。その性質を知ったうえで働くことが大事なのだという意味で『「がんばらない」という智恵』というタイトルにしています。
「無理してがんばらない」という価値観があることは、もうみなさんわかっていると思うんです。だけど、どうしてもがんばってしまう。