執着するから結果が出ない 異色の広告マンが語る仕事の極意 (3/3ページ)

新刊JP

元井:よく電通を外から見た方が「電通マンは全員バリバリで、体育会的な会社」ということをおっしゃるんですけど、そういう「いわゆる電通マン」という方は、全体の30%くらいだと思いますよ。他の人はうまくサボりながら働いています(笑)

――電通でクリエイティブディレクターとして活躍されていた元井さんですが、クリエイティブディレクターはクライアントやデザイナー、コピーライターなどの間で板挟みにやりやすいポジションです。ストレスを感じたりしたことはなかったのでしょうか。

元井:一人ではなくてたくさんの人がかかわる以上、自分の思う通りにはいかないわけで、そうなると当然ストレスは生まれますよね。ただ、それはクリエイティブディレクターだけではなくて、どの立場の人も同じだったはずです。

クリエイティブディレクターの仕事についていえば、関係者が多いと利害の衝突はやはり起きるもので、その中でどっちを取るか、どっちにつくかを判断して、反対する人を説得したり、あるいは飲みたくない条件を飲んだりするのが仕事です。それが好きかどうかというところですね。

私は、当然そこにストレスを感じていましたが、同時にカタルシスも感じていました。大きな選択をしたり、大きなものを諦めたり、大きく張った読みが外れたりといったこともたくさんありましたが、それは私にとってカタルシスでもあって、失敗したとしても達成感がありました。

会社の中で出世して、いつかは社長になりたいとか、何歳までに役員になって、ということを思っていたら「失敗は許されない」という気持ちになったのでしょうが、私はそういう気落ちはなかったものですから、失敗することにそこまで抵抗がなかったのかもしれません。失敗してもいいやと思えたのなら、あとは自分がおもしろそうな方を選べばいいだけなので。

――ただ、失敗してもいいとはなかなか思えない人が多いはずです。

元井:もともと成功するという保証もなければ、成功しないといけないという決まりもありません。本当は失敗してもいいし、もっといえば「わざと失敗する」という選択だってあるわけです。

「失敗してはいけない」というのもやはり執着です。どうしても出世しないといけないわけではないし、どうしても今度のコンペに勝たないといけないわけでもありません。この執着から離れられるかは、すごく大事なことのように思います。

(後編につづく)

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