土地や建物を売った場合に課税される譲渡所得税は、譲渡収入から、その譲渡した資産の取得費と譲渡費用を控除して計算される譲渡所得に対して課税されます。実務上、この計算で問題になるのは取得費です。というのも、数十年前に取得したり、相続により取得したりした資産については、いくらで取得したのか、その取得費(実額取得費)が不明なことが多いからです。
実額取得費が不明の場合、計算ができないため税務上概算取得費という特例が設けられています。これは、譲渡収入の5%を簡便的に取得費とすることができるという制度です。
■更正の請求という制度
ここで問題になるのは、概算取得費を選択して譲渡所得税の申告をした後になって、実際の取得費が判明した場合の取扱いです。この場合、概算取得費は5%しか引けませんので、実額取得費の方が、取得費が大きくなることが多いです。となると、概算取得費で計算した申告より、実額取得費の方が、譲渡所得税が小さくなりますので、計算方法を変えた方が有利になります。
このため、以前の申告を変えて税金を取り戻す手続き(更正の請求)ができるか、という問題が生じますが、従来はこの更正の請求ができないという見解が多数でした。
■更正の請求と計算方法の変更の関係
このような見解が多数だったのは、税金の計算上、納税者の選択ができる計算については、後日その選択を変えて更正の請求をすることができないとされているからです。典型例は前回の譲渡所得の契約日基準と引渡基準で、どちらでも選択できるので、いったん契約日基準で申告した後、後日引渡基準に変更して支払った税金を返してもらう更正の請求はできないとされています。
概算取得費と実額取得費もこの考え方と同じように考える傾向があり、実際のところ自称税務調査の専門家などは声高に更正の請求はできないと主張していました。
■法律をよく読むと
しかし、先日の裁決事例で、この多数説が誤りであることが明確になりました。法律をよく読むと、概算取得費と実額取得費は納税者が選択できるものではなく、実額取得費が概算取得費より小さいことが明らかな場合に限って使える制度とされているのです。
実額取得費が概算取得費より大きいと明らかになったら更正の請求は可能か?
2021.07.14 19:00
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