ホッキョクグマ(シロクマ)は、気候変動の影響で絶滅が危惧されているが、それでも彼らはたくましく生きている。
肉食のシロクマは、北極圏に生きる動物たちを獲物にしているが、時に自分よりも大きいセイウチを狙うこともある。巨大なキバに頑丈な頭蓋骨まで持つセイウチは、いかにホッキョクグマといえども容易に倒せる相手ではない。
だが彼らは知能がとても高い。道具(武器)を使用していたのだ。セイウチを狙う時には、岩や氷の塊でセイウチの頭を叩き割ることがあるのだそうだ。
・イヌイットはホッキョクグマが武器を使うことを知っていた
グリーンランドやカナダ北極圏東部で暮らすイヌイットたちは、200年以上も前からホッキョクグマが武器(道具)を使ってセイウチを殺すことがあると伝えてきた。
だが科学者や冒険家たちは、ただの伝説の類だろうと無視してきた。
そうした話は最近でもある。たとえば1990年代にはイヌイットの狩人が報告しているし、天王寺動物園で飼育されていたゴーゴというホッキョクグマ(現在はよこはま動物園で飼育)にいたっては、高いところにある肉を道具を使って手に入れる様子が実際に撮影されている。
そこでホッキョクグマ研究の世界的な権威であるイアン・スターリング博士らは、ことの真偽を確かめてみることにした。
「経験豊富なイヌイットの狩人がそう言うのなら、耳を傾ける価値があるし、正しい可能性が非常に高いというのが私の経験です」とスターリング博士は語る。