仏陀は29歳で修行に立ち、35歳で悟りを開いた。この僅か6年で悟りを開けるものか。後の人々はそう考えた。インドには古くから「輪廻」の思想があった。輪廻の中で様々な生き物に形を変えていく。仏教を伝えた者達は、仏陀が無限ともいえる生まれ変わりを繰り返し、善行を積んできたからこそ、悟りを開くことができたと考えた。その善行を伝える物語を集めたものが「ジャータカ」という書物である。
■ジャータカに記された仏陀の前世 尸毘王(しびおう)
仏陀の前世の尸毘王は、バラモンの僧に両目を布施した。そのバラモン僧は帝釈天で、王の慈悲深さに感激し両眼を元に戻した。
■ジャータカに記された仏陀の前世 雪山童子
仏陀の前世である童子が無仏の世にヒマラヤで菩薩の修行をしていた。羅刹が現れ、諸行無常・是生滅法といった。残りの半句を聞くため、腹をすかせた羅刹にお願いをし、半滅滅己・寂滅為楽の半句を聞き木石に書き残した。そして、投身し自らの肉体を羅刹に捧げた。その羅刹は帝釈天に姿を戻し、童子の身を受け止め、未来に仏と成ったときに我らを救い給えといった。
■ジャータカに記された仏陀の前世 薩埵王子(さったおうじ)
捨身飼虎で知られている物語。仏陀の前世である王子は、飢えた虎と7匹の子のために身を投げて虎の命を救った。
■ジャータカに記された仏陀の前世 月のうさぎ
仏陀の前世であるウサギは猿と狐と仲良く暮らしていた。ある時、力尽きた老人を助けるため食べ物を集めた。猿は木の身を集め、狐は川より魚を捕ってきた。しかし、ウサギは何も取れなかった。火を焚いてもらい、自らの身を食べてもらうため、炎に飛び込んだ。その姿を見た老人は帝釈天に姿を変え、その慈悲行を褒めたたえ、その行為が世界中に知れ渡るように月にウサギを描いた。他にも物語は記されている。奈良県・法隆寺蔵にある“玉虫厨子”にはジャータカ物語として施身聞偈図の雪山王子・捨身飼虎図の薩埵王子が描かれている。
■世に伝えた仏陀の前世
ジャータカは仏教を世に伝えようとした先人の努力の書である。仏陀の偉大さを伝えるものだけではなく、善行を行うための教科書ではないかと思う。善行を繰り返し行うことで、徳の高い人物に生まれ変わることができる。苦しみを感じている民衆や僧にとって、模範的な行動を示した書であっただろう。皆が見習うことで社会的規律が清く正されていくことも目的だったのかもしれない。
2500年前この世を生きた仏陀。人から仏になった唯一の者。我々は生まれ変わりについて何を感じているのだろうか。
ジャータカに記された仏陀の前世が行ってきた数々の善行とは
2022.11.08 19:00
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