褒められたい、世間に認められたい、有名になりたい。
こうした承認欲求は、誰もが大なり小なり持っている。この欲求があるからこそ人は努力したり、一つのことに集中して取り組むことができるが、あまりに承認欲求が肥大化すると自分を実際以上に大きく見せたり、ウソをついて体裁を取り繕ったりといったことにもなる。
まさに諸刃の剣である承認欲求に振り回される人々を描いたのが、『地図と拳』で直木賞を受賞した小川哲さんの新作『君が手にするはずだった黄金について』(新潮社刊)だ。
SNS全盛の今、肥大する承認欲求は「現代病」。今回は小川さんにお話をうかがい、この連作短編集の成り立ちについて、そして承認欲求との付き合い方についてお話をうかがった
■誰もが抱える承認欲求を正しい方向に向けるために――「SF作家」と呼ばれることが多い小川さんですが、『君が手にするはずだった黄金について』はSFの要素はほとんど感じられません。この作品がどのようにできあがっていったのかについてお話をうかがえればと思います。
小川:今回の本に入っている作品で最初に書いたのは「小説新潮」の山本周五郎特集号に掲載された「3月10日」なのですが、当時まだ『地図と拳』の連載中だったので、それとは違うものを、ということで調べものをする必要があまりなくて、現代が舞台のものを書こうと思ったのが始まりです。
掲載誌が「小説新潮」なので無理してSFを書く必要もないだろう、というくらいの感じでしたね。もともと「こういうジャンルのものを書こう」と決めて書くタイプではないですし。
――「承認欲求」がテーマになっている連作短編集です。このテーマはどのように決まったのでしょうか。
小川:僕は作品の中で小説について考えることが多いんです。『地図と拳』では建築や戦争について考えているんですけど、そこでも「建築と小説はどのように違って、どのように同じなんだろう」という感じで、小説を通して建築を考えていました。