郷土料理はもともと「日常食」
郷土料理という言葉は、現代ではごく普通に用いられていますが、この言葉はごく新しいもので、近代以降の文化および社会の変化の中で生まれたものです。
そもそもの話として、日本人が各地域で日常的に食べていた料理は、長らく「郷土料理」として特別に意識されることはなく、単に「その土地で食べられているもの」に過ぎませんでした。
では、いつ、どのようにして「郷土」と「非郷土」の区別が生まれたのでしょうか。
江戸時代以前、日本の食事は地域ごとの自然環境に強く依存していました。山間部では保存性の高い漬物や乾物が、また沿岸部では魚介類を中心とした料理が発展しました。
これらの多くは、今では郷土料理のカテゴリーに入ると言われても違和感はありません。しかしそれらは原初の形態としては、ただ単に人々の生活の必然として存在していたのです。
例えば、秋田の「きりたんぽ」や山形の「芋煮」は、米や里芋といった地域の農産物を活かした料理であり、地域の人々にとっては日常食でした。
明治期に入り、鉄道網の整備や都市化が進むと、各地の食文化が他の地域の人々の目に触れるようになりました。