人口減少や市場環境の変化を背景に、地域企業にとって一つの事業だけに依存し続けることのリスクは小さくない。
一方で、新しい事業へ進出すれば、その分だけ人材や資金、管理の負担も増える。多角化は必ずしも経営の安定につながるわけではなく、本業との関係をどのように設計するかが重要になる。
埼玉県所沢市を拠点とする株式会社吉村は、空間設計・施工や家具事業を基盤としながら、カフェ、ファッション、スポーツなどへ事業領域を広げている。
なぜ異なる分野へ進出するのか。同社代表取締役の吉村久朋氏に、多角化を進める背景について聞いた。
家具・建築会社がなぜカフェやファッションを手掛けるのか株式会社吉村は1952年に設立され、空間づくりの設計・施工や家具の企画・卸販売などを手掛けてきた。
現在は、そこから事業領域を広げ、ファッションやカフェ、スポーツ関連の取り組みなども行っているという。
一見すると、それぞれ別の事業に見える。
しかし吉村氏は、建築や家具、インテリア、ファッション、コーヒーなどを個別の商品としてではなく、「空間をどうつくるか」という視点で捉えていると話す。
例えばカフェの場合、飲食物を販売するだけでなく、家具や内装、照明などを実際に人が使う場所にもなる。空間づくりを本業とする企業にとっては、自社で店舗を運営することで、利用者がどのように空間を使うのかを確認する機会にもなる。
同社がPMやコーディネートを担当した建築物「Grove」は、2023年度グッドデザイン賞を受賞している。設計・デザインは御手洗龍建築設計事務所が担当した。
こうした案件では、設計者や施工会社、家具、設備など複数の関係者を調整する必要がある。同社では現場管理にも携わりながら、空間全体をまとめる役割を担っているという。
ただし、事業領域を広げるほど、必要となる専門知識や人材も増える。
本業で培ったノウハウを別事業へ応用できる部分がある一方、すべての分野で同じ経営手法が通用するわけではない。