永田町で蠢く「不良議員」と「無頼秘書」が日本の政治をダメにする

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参院特別委で謝罪する礒崎首相補佐官
参院特別委で謝罪する礒崎首相補佐官

【朝倉秀雄の永田町炎上】

「人殺し」を公設秘書にしていた中根一幸外務政務官

 国会議員の劣化が甚だしい。安倍総理の“親衛隊”ともいうべき若手・中堅議員たちの勉強会「文化芸術懇話会」での報道機関への圧力を求める「暴言」が安全保障関連法案の審議の足を引っ張り、内閣支持率を低下させたのも束の間、今度は側近中の側近の首相補佐官・磯崎陽輔氏が「法的安定性関係ない」などと口走る始末だ。8月3日の参議院平和安全特別委員会に首相補佐官として初めて参考人招致された磯崎は平身低頭。発言を取り消し、「おわび」を7回も連発し、火消しに躍起になった。だが、安倍内閣にとって大きな痛手になったことは間違いない。

 むろん磯崎のような東大法学部出身で元内閣参事官を務めた頭脳明瞭なキャリア官僚出身が「法的安定性」の重みを知らないはずがない。およそ法解釈には「法的安定性」と同時に「具体的妥当性」が求められる。「自衛隊違憲論」のような非現実的な主張が愚か者の戯言として相手にされないのも、ひとえに具体的妥当性を著しく欠くからだ。要は磯崎氏は安全保障環境の変化に即した具体的妥当性を強調したかっただけで、単に「舌足らず」に過ぎない。

 そんな取るに足らない「舌禍」より驚愕すべきは、安倍内閣の中根一幸外務政務官がよりにもよって“人殺し”を特別職国家公務員である公設秘書にしていたことだろう。一般職公務員に準じた欠格事由のある政策秘書以外は、日本国籍があり議員の配偶者でなけば誰でも公設秘書になれる。これは選挙違反や政治資金規正法違反などで何度有罪になっても、議員がそのまま雇い続けることができるようにするためだが、そうなると当然、かなりタチの良くない人間も紛れ込む。典型例は大阪府議の秘書時代に高校生相手にストリートファイトを演じて現行犯逮捕された“武勇伝”を持つ上西小百合の「巻き舌秘書」こと家城某であろう。他にも蓮舫議員の公設秘書の痴漢騒動、片山さつき議員の秘書の浜松市議への暴行事件、藤田幸久讃員の公設秘書の覚醒剤取締法違反など無頼秘書たちの不祥事は枚挙に暇がないが、さすがに「人殺し」というのは前代未聞だ。

 中根といえば2006年12月、友人らと池袋の飲食店でしこたま洒を飲んだ挙げ句、店側とトラプルになり、女性店主に暴力を振るったとして警察に被害届を出された。示談が成立したことで、かろうじて起訴猶予処分になるという極めて不名誉な前歴を持つ。いくら「類は友を呼ぶ」とは言っても明らに常軌を逸している。

 件の秘書は主犯がカネで雇った5人の実行犯の1人で、「殺意」はなかったと認定されたために「殺人罪」ではなく「逮捕監禁致死罪」で懲役6年の実刑判決を食らっているが、尊い人の生命を奪ったことは間違いない。この男は日頃、議員会館の中で、さも自慢げに「俺は人を殺している」などとうそぶき、恐れをなした同僚秘書が何人も辞めているというのだから、中根はなんとも「物騒な男」を飼っていたものである。

「脱法パーティ」で5億4000円を荒稼ぎした山田俊男議員

 議員の中には、さながら「極楽」のような議員稼業を送る者がいる。それは票もカネも日本医師会や看護協会、日本歯科医師連盟、経団連、土改連など業界団体の支持母体丸抱えの参議院比例区選出議員だ。

 当然、背後組織には黒い錬金術の疑惑がつきまとう。4月に東京地検特捜部が「日本歯科医師連盟」の事務所を、組織内候補である民主党の西村まさみ議員と自民党の石井みどり議員に対し「迂回献金」の手法で法定上限額を超える寄附の容疑で家宅捜索に入ったのは周知の通りだ。

 そして目下、改革の対象になっている全国農業協同組合中央会出身で「全国農業者農政運動組織連盟(全国農政連)」の組織内候補である山田俊男参議院議員にも黒い疑惑が浮上している。それは8割がた本人が出席しないのにもかかわらずJA関連団体の職員らが「昼食会」や「意見交換会」などの名目で6年間に394回もの「政治資金パーティ」を開き5億4293万円もの巨額なカネを荒稼ぎしたというものだ。

 ちなみにJA全中などには農水省から補助金が出ているから寄附はできないが、政治資金パーティの「会費」を払うことは違法ではない。

 都内の一流ホテルでの大がかりな「政治資金パーティ」は、議員たちの「生活の知恵」が生み出した典型的なカネ集めの手段だが、後援者や支持者から反発を買い、票が逃げてしまうから、あまり頻繁にはできない。そこで手っ取り早くカネを稼げる方法として考えだされたのが「昼食会」や「朝食会」の名目で1万円程度の会費で50名程度の人を集め、官僚や学識経験者などを講師に呼んで適当な話をさせ、会費と弁当代などの経費との差額を懐に入れる方法だ。

 多くの議員がやっているが、それも月1回というのが普通だ。むろん本人は出席する。その点、山田議員の6年で394回というのは1年で約66回にも及び、しかもほとんど本人が出席しないというのだから、明らかに異常という他はない。法の抜け道を突いた「脱法行為」だと言われても仕方があるまい。

 他にも公設秘書の給与をピンハネした山田賢司衆議院議員やセクハラで女性秘書に慰謝料1000万円を払って和解した第二次安倍内閣の厚生労働政務官の赤石清美参議院議員など、とにかくこの国の国会議員や秘書は質が悪すぎるのだ。

朝倉秀雄(あさくらひでお)
ノンフィクション作家。元国会議員秘書。中央大学法学部卒業後、中央大学白門会司法会計研究所室員を経て国会議員政策秘書。衆参8名の国会議員を補佐し、資金管理団体の会計責任者として政治献金の管理にも携わる。現職を退いた現在も永田町との太いパイプを活かして、取材・執筆活動を行っている。著書に『国会議員とカネ』(宝島社)、『国会議員裏物語』『戦後総理の査定ファイル』『日本はアメリカとどう関わってきたか?』(以上、彩図社)など。最新刊『平成闇の権力 政財界事件簿』(イースト・プレス)が好評発売中
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