【映画監督vs評論家】園子温、樋口真嗣、紀里谷和明ら監督の怨み炸裂の舞台ウラ

人気映画監督の園子温氏とされるアカウントがツイッターで過激発言を連発し、映画ファンの間で話題になっている。具体的には作品を批判する映画評論家やファンに反論する内容だが、あまりに強烈な言葉の数々が物議を醸している。
これに限らず、最近は映画の作り手が評論家に反撃するケースが増えているようだ。
園子温vs宇多丸のバトルが勃発!?
騒動の発端は8月9日、あるネットユーザーが「宇多丸の『進撃の巨人』批評は聴き応えあった。園子温の『TOKYO TRIBE』も誉めるだけでなくダメなところは容赦なく斬るのが良い」と、ラッパーで映画評論家としても名高いRHYMESTER・宇多丸の観賞眼を褒めたたえるツイートを投稿したことだった。
これをエゴサーチで探し出したのか、園監督のアカウントは「斬られてねえよ、傷がないし。痛みもない」「容赦ないってただ見ただけだろ? 肉体的評論じゃねえよ」などと直接反論。さらには「ウタマルってモドキ映画評論家ぶった野郎はラップだけやっとけ。馬鹿」と名指しでコキ下ろし、そのままネットユーザーとの映画論争に発展した。
園監督のアカウントは「そもそも映画って他の分野と違って映画の事なら俺でもわかるからまかせてって事で誰でも参加できるとこが楽しいちゃあ楽しいわけだけど、そこがつまらないトコでもある」と持論を展開し、映画評論家やファンが“現場”を知らずに好き勝手に批判することを疑問視。選手経験のある野球評論家を引き合いに出して「(野球評論家は)戦場経験から素人と全く違う肉体的評論が出来る。今の日本の映画評論家に肉体的評論家はいるのか?」と書き込んだ。
続けて「俺が言いたいのは(映画を)2時間みてラジオで何か言うのと、作るのは肉体的・精神的にまったく違うってこと。政治評論家が政治家を貶すのは簡単だが政治は大変ってことだ」とも綴っており、ついには「映画評論家ってバカばっかだよ」「不満のある奴は二度と俺の映画なんか見なくていい」とまで言い放っている。
あまりの過激さに「なりすましでは?」と疑問が沸き起こったが、監督作に出演しているモデルの池田エライザや業界関係者がリプライを送っていることもあり、本物であると認識されているようだ。
これに映画ファンから「熱い気持ちが伝わってきた」と評価する声が少なからず上がったが、その一方で「ガッカリした」「評論家の意見は参考になるけどな」「作り手しか何も言えない世界は成熟しない」といった批判も。同時に「園監督も宇多丸も好きだから複雑」といった意見もある。
映画に真摯に取り組んでいる純粋で破天荒な園監督らしい発言ともいえるが、暴言に近いような口調だったこともあって衝撃が大きかったようだ。
「進撃の巨人」でも批判発端に炎上騒動
似たようなケースでは、今回の騒動の発端になった映画『進撃の巨人』でも同じような状況が起こった。
人気コミックを実写化した同作は、公開直後からネット上で酷評の嵐。某映画評論サイトでも「40点」などとバッサリ斬られたが、それを目にした樋口真嗣監督が自身のFacebookに「誰だよ、こいつに試写状送ったバカは!」と書き込んだ。これに「批判を容認できないのは大人げない」などと批判が殺到し、炎上状態になってしまった。
また、特殊造形プロデューサーとして同作に携わった西村喜廣監督は「みんな映画はハリウッドがいいんだね! じゃあハリウッド映画だけ観ればいいよ! 予算と技術はある方がいいもんね! 特に予算! 金で顔叩かれた映画を観ればいいと思います!」などと、自身のTwitterで世間の批判に反論。この発言にも原作ファンを中心に猛バッシングが殺到した。
作り手の不満が爆発したのはこれだけでなく、宇多田ヒカルの元夫としても知られる映画監督の紀里谷和明氏は、8月3日に出演したバラエティー番組『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)で直接反論。2004年の監督作『CASSHERN』を酷評した映画コメンテーターの有村昆氏を前に「制作費6億円で15億円の興行収入を上げたのにコケたことにされてしまった」などと主張した。
日本の映画評論家からはボロクソに言われたというが、同作をきっかけにハリウッドからオファーが届いたといい、紀里谷監督は「日本のワケわかんない評論家には分かってもらえない」などと嫌みを連発。番組の最後でも「『批判をすること』より、『作ること』のほうが100億倍難しい」と話をまとめ、有村を含めた評論家に対する恨みを炸裂させていた。
実際、一本の作品をつくり上げる労力は並大抵のものではない。作り手がいなければ評論は存在すらできないのだから、クリエイターをリスペクトすべきという意見も理解できる。作品を批判されたら、それに怒るのも作り手の自由だ。
しかし、評論家も顔と名前を出して身体を張っているのだから太鼓持ちのような褒め言葉ばかり言えないし、お金を出している観客だって自由に意見を言いたい。その三者の気持ちの落としどころを考えると、なかなか微妙で難しい問題といえそうだ。
(文/佐藤勇馬)