戦艦長門から米空母サラトガも! 沈没船を間近で見られる"レックダイビング"の魅力

デイリーニュースオンライン

写真はイメージです(Photo by Malcolm Browne via Flickr)
写真はイメージです(Photo by Malcolm Browne via Flickr)

 戦艦「武蔵」、伊「402」潜水艦、特攻兵器「海龍」──戦後70年の節目となった今年、沈没した旧海軍艦船や特攻兵器が続々と発見されている。

「沈船には当時の夢とロマンが詰まっている。それを間近にみることで元気を分けてもらえる。だから潜りに行くんですよ!」

 アマチュアダイバー歴10年という男性(32歳)は、“レック(沈船)・ダイビング”の魅力をこう語る。そもそも、地上の世界から切り離された海中への魅力からダイビングを始めたが、沈船の魅力に取り付かれたのはここ5年のことだ。和歌山県の海で潜っていたとき沈んでいる船をみるためのダイビング・ツアーに参加したからだ。

「名前も知らない船でした。でも何年か前にはこの船も海上を自由に駆け巡っていたと思うと、何だか歴史に繋がったような気がして。この船の乗員たちはどんな人だったのか。知りたくなりましてね。以来、レック・ダイビングにハマっています」

初心者は南紀白浜、上級者はマーシャル諸島

 レック・ダイバーには、前出の男性さんのようにダイビングの趣味が高じてこの道に入ってくるケースのほか、旧軍に関心を持つ軍オタや戦史オタから入ってくるケースの2つの系統があるという。現役の海上保安官の男性(39歳)は後者のケースだ。

「海中の戦艦『長門』が見られると聞いて以来、ダイビングをはじめました。まだ長門は見ていませんが、国内だと与論島に沈む元巡視船『あまみ』を見ました。もうすこしダイビングの技術を磨いて長門を見に行きたいですね」

 レック・ダイビングスポットは、国内だと先述した与論島の沈船「あまみ」のほか、和歌山の南紀白浜、静岡県伊豆の土肥が初心者向けのスポットだという。

「観光地として沈船を見せているところは、安全性の面でも初心者にはお勧めです。観光地以外では東京・小笠原諸島でしょうか。慣れてくると自分で沈船を探して潜りたがるダイバーもいます。でも今月発見された特攻兵器『海龍』のように爆発する危険もあるので注意が必要です」(現役の海上保安官の男性

 上級者となれば、沖縄県古宇利島で水深36mから46mの位置に横付けになっている米軍駆逐艦「エモンズ」が人気だ。もっと深いところに潜りたいのであれば静岡県熱海がいいかもしれない。水深約30mの静岡県熱海沖には、全長81mの砂利運搬船が海に沈んでいる。海中でみる船は地上や海上でみるのとはまた違う圧巻ぶりがあるという。

 海外に目を向けてみると、イギリス領ケイマン諸島の沖合に沈む米軍の軍艦「キティウェイク」が人気だ。2011年に観光目的のために沈められたことから安全性も配慮されており、初心者ダイバーにはうってつけのレック・ダイビング・スポットだ。

「上級者なら、やはりマーシャル諸島、ビキニ環礁の軍艦『長門』、米軍空母『サラトガ』でしょう。ここは第2次世界大戦終了後の核実験で何隻もの軍艦が沈んでいます。レック・ダイバーなら一度は行ってみたいところです」(同)

 このほかスコットランドにはドイツの軍艦、エジプトには軍需品を積んだままの船が海中に沈んでいる。

「近頃、発見された戦艦『武蔵』は海底1000mの地点で眠っているのでさすがにダイビングはできません。でも人が潜れる水深で眠っている旧日本軍艦、第2次世界大戦で活躍した商船は見ようと思えばみられます。レック・ダイビングを通して、歴史とは、戦争とは……を振り返る時間を多くの人に持ってもらいたいですね」(同)

 潜水艇やソナー機器、海中カメラの技術向上もあり、旧軍の沈船が以前より容易に発見される時代。ただその報を聞き、じっとしているだけではもったいない。実際に潜ってみて、直接当時の先達たちの息吹に触れてこそ歴史が感じられる。敵味方関係なく海で散った軍人たちの霊を弔うのも後世に生きるわたしたちの務めだ。

 なおこれらレック・ダイビングでは、今でも銃器や銃弾、爆弾などが沈んでいるものもあるため沈船内での行動はくれぐれも注意して貰いたい。

(取材・文/川村洋)

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