新国立競技場「五輪後は巨人の本拠地説」の信ぴょう性|プチ鹿島コラム

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Photo by Keith Allison
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 今週おやっと思ったのが次の記事だ。《「新国立 プロ活用も検討 文科相 五輪後「黒字前提に」》8月19日の産経新聞が一面トップできた。

 下村博文・文部科学相が「(新しい整備計画では)ナショナルスタジアムにはこだわらない。2020年以降に民間委託し、プロの野球チームやサッカークラブのホームグラウンドになる可能性は十分ある」との見方を産経新聞のインタビューで示したのだ。この新国立競技場の「後始末」について、私は各新聞・週刊誌を注意深くながめてきた。

 まず6月末のこの記事。「五輪後の赤字解消に仰天プラン浮上 巨人本拠地移転計画」(日刊ゲンダイ・6月26日)

 莫大な維持費はサッカーの日本代表戦やコンサートなどでは賄えない。そこで巨人、なのだという。「すでに、自民党の重鎮と読売グループの幹部との間で話し合いの場が持たれたとの情報もある」と記事は書く。正直、こういう噂もあるのかという「想像を楽しむ系」の読み方だった。しかし、この数日後にスポーツ報知がこんな記事を出してきたのだ。「五輪後にプロ野球誘致案」(6月30日)。

「プロ野球などを開催する構想を自民党の幹部は描く」と報知は伝えた。タブロイド紙ではなく巨人と関係が深い報知がさりげなく書いている点に注目した。

後藤田代議士、安田社長、森喜朗…本当の仕掛け人は誰?

 では、実際に動いているのは誰だろう。写真週刊誌「FRIDAY」(8月21・28日号)は、「新国立競技場『五輪後は巨人の本拠地』マルチ計画極秘進行中」という特集のなかで、「仕掛け人は、後藤田正純代議士と、スポーツブランド『アンダーアーマー』の日本代理店・ドーム社の安田秀一社長」と書く。

 そして「7月14日に安倍総理は官邸に稲田朋美政調会長を呼び込み、このプランの検討を指示。稲田氏は読売グループのドン・渡邉恒雄グループ本社会長に接触」と報じた。渡邉恒雄氏といえば、もうひとつの有力なラインがある。お忘れだろうか。今回の新国立競技場問題で、誰が見ても「この人がいちばん影響力が高いんだろうな」と思わせた男。そう、「森喜朗」というキーワードを入れてみると、この問題も途端に匂う。「あ!」と思うのだ。森喜朗は渡邉恒雄と巨人戦を観戦するほど仲がよい。それだけではない。

《松井はわが故郷(石川県能美市)の出身で、ぼくの実家から五百メートルのところに実家があります。だから、後援会の名誉会長を務めていた。》( 森喜朗×田原総一朗 現代ビジネス・2014年01月01日)

 松井側としては地元の大物政治家が近寄ってきたらぞんざいには扱えない。田舎ってそういうことだ。松井サイドと読売サイドとパイプを持っているのが森喜朗なのだ。もし、新国立競技場が巨人の新本拠地になるとしたら大きな売りが必要になる。切り札が求められる。それが「松井監督」だとしたら……。

 松井秀喜は現在「ポスト原監督」の筆頭。ただ本人があまり興味を示していないと言われている。森喜朗にとってはあれだけ叩かれた新国立競技場。もし巨人が五輪後に引き受けてくれるとしたら、松井監督実現に必死になるはずだ。自分が大風呂敷を広げた「戦後処理」の格好がつくかもしれないのだから。

 そう考えると巨人にとって松井監督実現はべつに来年でなくてもいい。むしろ2020年以降に松井監督が実現したら、読売も森喜朗も新国立競技場サイドも三者三様が万々歳なのである。人の良い松井は2020年の切り札になるのだろうか……。「森喜朗」というキーワードを入れるとこのような見立てもできるのだ。

 しかし、今回の産経新聞で当事者の下村文科相が「プロの野球チームのホームグラウンドになる可能性は十分ある」と早くも発言した。うかつすぎないだろうか。こうなると「巨人の将来のホームグランドのために、巨額の税金を投じるのは腑に落ちない」(日刊ゲンダイ・8月24日)という反応も出てくる。当然だろう。

 本当に内々でその話が進行していたとしても、下村文科相がアドバルーンを早くあげすぎたおかげで、この話が白紙になる可能性も出てきたと私は思う。

 五輪問題をめぐる下村文科相の対応は、「とにかく明るい安村」ならぬ「とにかくずさんな下村」と私は呼んでいるのだが、またやっちまったのだろうか。

著者プロフィール

putikashima

お笑い芸人(オフィス北野所属)

プチ鹿島

時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)。

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