【未解決事件の闇19】女性編集者失踪・渦中の人物に会う「何なら実名出してもええんやで」 (2/2ページ)
昔3ヵ月ほどブタ箱に入ったことがあるけど、3ヵ月で勘弁です。あんなきついところ、もう嫌です。
それにね、私、腕っぷしには自信がありますからヤクザ者だったらいくらでも倒せるけど、辻出さんみたいなか弱い女性には手を出せるはずがない。まして、そんな若い女性を埋めることなんてようしません。そんなひどいことできませんよ。しかも、私が手がけた現場には。手がけた現場を私は神聖な場と思ってるの。そんなところに埋めるはずがありませんよ。ガハハハ」
では次に、朝6時30分すぎにXがNにかけた3分近くの電話の内容はどうだろうか。そのことを訊ねたところ、「一昨日の夜、何食べたか覚えてますか? 覚えてないでしょ」と言いつつも、Nの表情がかすかに曇ったような気がした。僕は続けて質問した。
「その時間、何をしてたんですか」
「たしかその時間、資格の勉強をしてたんです。そのときXから電話がかかってきた。バイオハザードの攻略法を聞いてきたんだと思います」
バイオハザードとは1990年代後半にミリオンセラーを記録した家庭用ゲーム機用のホラーアクションアドベンチャーである。
「バイオハザードの攻略法って、電話口の3分で言えるもんなんですか」
Nを試すように言う。すると、Nはもとの豪快な表情になり、再び口を開き、すらすらと答えた。
「初め、彼は馬鹿にしてたんですが、いつの間にかはまったんです。階段を上って右に行き、ゾンビを殺し、また上に行って...」
確かに3分で言える。これはすごい。
「電話の後は何をしてたんですか」
「朝7時には従業員が家に来るわけです。遺体をその間どうやって置いておくんですか。私は関係ない。やってません。名前出してくれていいよ」
では最後に、Xについてはどう思っているのだろうか。聞いてみた。
「Xはグレーです。何も言わないんですから、白なのか黒なのか、よくわかりません。彼のことは信じてますが、もしやったのなら、罪をあがなうべきです。だってそうでしょ。やってないとしたら、そのことを警察にはっきり言えばいい」
Nは一変のやましさもないようであった。
※つづく
Written&Photo by 西牟田靖