AVや風俗業界で人身売買はあるのか?告発系記事への反論【後編】

東京ブレイキングニュース

 前回はAV業界の内情をよく知る人間として、女性団体らが主張する点のおかしさを指摘したが、今回は誤解を招きやすいAV業界の特性や、「もし人身取引被害の告発が事実だったとしたら」という点について語らせていただく。

●実は自浄作用を持っているAV業界

 どう考えても人身取り引きや性的搾取の被害告発系の記事は「だいぶ盛ってるな」とか、より酷い物に対しては「業界を知らない、知ろうともしない人間が妄想で書いたのではないか」という邪智をしてしまう。そうした情報を拡散したがる方々によく見受けられるのが、AV業界にもそれなりに自浄作用があるという点を見てくれない事だ。

 例えば、バッキー事件を覚えておいでだろうか。バッキーというAVメーカーが女性の身体が壊れるような酷い撮影を繰り返し、中には人工肛門になってしまった子までいた痛ましすぎる事件である。あの事件がどういう経緯で事件化され、解決に向かったかご存知だろうか。実はあれは、女の子を壊された "J" というプロダクションの経営者が腹を括り「最悪の場合は栗山と刺し違える」という覚悟で動いた事で表面化し、警察が動いたのだ。

 当時、バッキーはプロダクション等に対してあまりにもコワモテな手法を採るため、業界内で「あいつら何者だ」と悪い意味で注目を浴びていた。つついたら何が出て来るか解らない、アンタッチャブルな存在だと認識されていたのである。

 だが女の子を壊されたプロダクションは黙って泣き寝入りする訳にもいかず、ヤクザが出て来ようがマフィアが出て来ようが構わないと、大袈裟ではなく殺される覚悟で戦う道を選んだ。それを意気に感じ、メーカーやプロダクションといった業界内の同調者が現れ、情報が集積され、警察が動いてからはあっという間の捕物劇だった。かく言う私の元にも情報提供や協力の依頼が来たほどだ。

 このように、あまりにも酷いやり口をしていれば、業界の内部から潰しが入るのがAV業界なのである。裸仕事というと、どうしても胡散臭がられてマトモに見て貰えず、何かというとヤクザめいたやり口が横行している非人道的な業界だと思われがちだが、実際は「脱いでくれる女性達のお陰で食えている」と身にしみて理解している人間が大多数を占めており、原則として「女優様は宝物、それ以外はゴミ」という考え方でいなければ通用しない。 ここが世間の皆様にいまいち理解して頂けない部分である。

●被害が本当だとしたら、恐らく舞台は "AV業界" ではない

 とはいえ、女性団体らが主張する被害がまるっきりのウソだとは言い難い。というのも、似たような話は "過去にならあった" からだ。10年以上前の業界にうなるほど金が回っていた時代ならば、逮捕リスクを考えてもまだ儲けが残るため、かなり悪辣なやり方をするプロダクションやメーカーがあった。今と比べて法律や条例に不備があった事もある。

 その時代の昔話としてならば聞ける事も多いし、私も「女性がいつでも抜け出せる状況であるべき」という主張には諸手を挙げて賛成する。入るのも自由、出るのも自由を裸仕事の原則とすべきだ。それについてもAVプロダクションは必要なケアはしており、例えばAV女優がほぼ全員芸名で、かつ出身地や生年月日のプロフィールが殆どウソという点がまさにそれだ。どんな個人情報から何が漏れるか解らないため、昔からプロダクションは女優の "本当の情報" を隠すようにして来た。

 一度でもAVに出たら、その記録は一生消えないとか、作品はずっと世に残ってしまうという点についても、それと引き換えの高額のギャラだと考えたら致し方ないだろう。そういう条件の仕事で、その対価としていくらというギャラ設定があるのだから、そこを後になってから持ち出されてもどうにもならない。ただ、それにしてもプロダクションがメーカーに頭を下げ、廃盤扱いにして貰うというケースもある。女の子に対して泣けるだけ泣くというのが、今のAV業界の方法論でもあるのだ。

 そのような話を無視し、あまりにも業界の実態とかけ離れた話を「事実だ」とか「それがAV業界だ」といった口調で撒き散らされては、今回のように細かい点をあげつらって反論せねばならなくなる。まだまだ問題点の多い業界ではあるので、改善すべき部分はいくらでもあるのだが、それでも事実とは言えない盛り方をされては黙っている訳にはいかない。

 また、どう考えてもAV業界の内情を知らなすぎるようなので、根本的に勘違いをしている可能性すらある。それが何かと言うと「FC2などエロの有料配信で食ってる不良連中の話じゃないか」といった疑惑だ。それならば地下で誰が何をやっているのか解らないので、中にはヤクザめいた手法で無茶をやっている素人がいたとしても不思議ではない。不良系ならば、実際にプロダクションをやっている先輩などがいてもおかしくないし、変に悪い知恵を付けたという事も考えられる。

 裸やセックスの動画を金にしているのだから "AV業界" と言いたくなる気持ちも解らないでもないが、では社会問題になった援交ビデオはAV業界の中に入れるべきだろうか。あれなどAVメーカーもプロダクションも絡んでいない素人仕事なのだが。

 このように、AVにしても児童ポルノにしても、間違った言葉の使い方をすると「監視すべき、締め上げるべき病巣」が見えなくなってしまう。結果として、助けるべき人間が助けられなくなる。港の倉庫で人が殺されそうになっているのに、山に急行してどうするんだという話なのだ。

 もしかすると、私やAV業界歴20年以上といった大ベテラン達でも知らない場所で、女性団体様達が言うような被害に遭っている女性がいるのかもしれない。しかし、それはどう考えてもAV業界の中心ではない。にも関わらず、さもAV業界全体を悪しき物のように言い回られては、その仕事じゃないと生活を成り立たせられない女性を窮地に追い込む事にもなる。

 女性団体が目をそらす最大の箇所がこれなのだが、今や日本は女性(特にシングルマザー)に厳しく、まともな手段では食べていけない。救済処置も無さすぎる。 だからこそセックスワークを選ばざるをえない女性達が増え続けているのだ。そんな状況で法を守っているセックスワークまで叩き潰すような事をしては、それこそ違った形での被害女性が増えてしまう。昔話になるが、小人プロレスが人権団体に潰され、自力で収入を得る手段を無くした小人達が悲惨な人生を送る事になったという実例を忘れないで欲しい。

 最後に追記としてAV業界への苦言を呈するが、オリンピックへ向けてエロ業界は今後も締め付けが強まる一方になる事が予測される。そんな状況で事件がひとつふたつ起きれば、それを理由にどんな摘発が行われるか解ったものではない。よって、そろそろ業界内部にセックスワーカー(主にAV女優)の駆け込み寺的な組織を作っても良いのではなかろうか。女性団体などの外部の人間に好き放題言われては、裸商売の方が分が悪いのは目に見えているのだから、それを言われないための処置は講じておくべきだろう。AV業界の人間がどれだけ危機感を持って動けるかに全てがかかっている。

Written by 荒井禎雄

Photo by ManNg

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