コネチカット州から考える「アメリカの銃社会」銃規制ができない理由 (3/3ページ)
労災補償など、もちろん存在しないに等しい時代だ。そんな中で労働者を第一に考えるコルトの経営方針は、ハートフォード工場の従業員の士気を大いに奮い立たせた。
その後、コルト・ファイアアームズは南北戦争期にはライバル社のスミス&ウェッソンに遅れを取るものの、戦争終結後に訪れた西部開拓時代で再び息を吹き返す。今も生産され続けているコルト『M1873』、通称『ピースメーカー』はカウボーイたちのトレードマークになった。この銃に合わせて発売された45口径ロングコルト弾は、拳銃弾でありながらバイソンを射殺することができる。
この後もコルト・ファイアアームズは、威力の高い拳銃を開発し続けその度に巨額の利益を得た。
■ 州を支える銃産業
私事になるが、筆者は静岡市生まれで相模原市育ちである。この両市に共通しているのは、大手重工業メーカーの工場を持っているということだ。
三菱電機の家庭用エアコンと冷蔵庫の生産ラインは、静岡製作所が引き受けているし、相模原市には防衛省に車両を納入している三菱キャタピラーの工場がある。そういえば、相模原には日金工の工場もあった。どれも巨大な施設で、その分地元の雇用に貢献している。
コネチカット州の銃製造産業も、かつてほどの規模はないとはいえ今も地元の経済を支える柱となっている。そうである以上、全米ライフル協会が危惧しているように“銃規制法案が社会不安を生む”ということになりかねない。
さらに今、アメリカの銃産業は軍需部門が不振に陥っている。拳銃、自動小銃、分隊火器(軽機関銃)、特殊部隊が使用するマシンピストルに至るまで、ヨーロッパのメーカーが幅を利かせている。長年アメリカ軍の自動小銃として君臨してた『AR15』系列の銃は、近いうちにベルギーのFNスカーに更新されるという報道もある。
となると、アメリカ国内の銃器メーカーは民間向けのセールスにウェイトを置くようになる。現にコルトがパテントを握っていた『AR15』は、そのパテントが失効した途端堰を切ったように各社が『AR15』の製造に乗り出した。サンディフック小学校事件で使われた凶器も、ブッシュマスター製の『AR15』だった。
エアコンや冷蔵庫は、決して人を殺すことはない。自衛隊に納入される装甲車も、国家の安全保障という目的があるからこそ製造される。ハートフォードの工場で生産される銃も、かつては“開拓民が荒野で生きるため”という目的があったのだろう。だが、21世紀の東海岸地域に荒野はもうない。
そういう意味で、アメリカは重要な転換点の上に立っているのだ。