「おしん」が海外でウケた理由…努力と商倫理の申し子 (2/3ページ)

FUTURUS

16世紀のイギリス国王エリザベス1世などは例外中の例外で、しかも彼女ですら畑違いの弟が早死しなければ“テューダー王朝の王女”から一歩も外れることはなかった。

王家以外のイングランド人なら、なおさらだ。しんが奉公に出された当時のイギリスは、法律で家の財産を女性が継ぐことはできなかった。蓄財の管理権は必ず男性が握るようになっていたのだ。日本でも人気を博したイギリスのテレビドラマ『ダウントン・アビー』は、そうした男系社会を背景にした作品である。

『ダウントン・アビー』第1シーズンは1912〜14年にかけての話だ。イングランドの貴族クローリー家は、財産の継承者だった男子をタイタニック号沈没事故で亡くしてしまう。クローリー家の当主の子は3人いるが、いずれも女子だ。そこで遠縁の若者を家の次期当主として指名するが、そこからお家騒動が始まり……という物語である。

たった100年前のイギリスは、こうした明確な男女格差が存在した。


■ 海外の階級社会

また、日本以外の国では社会階層間に大きな壁がある。

これもイギリスの作品だが、『マイ・フェア・レディ』というミュージカルがある。言語学者ヘンリー・ヒギンズがロンドンの下町で知り合った少女イライザの庶民訛りを矯正し、貴族の子女にでっち上げるという内容だ。

英語圏の国は、地域間はおろか中産階級・労働者の間にも方言が存在する。ロンドンの庶民の場合は『コックニー』という言葉を話す。『A・I・E』を「アー・イー・エー」と発音するから、クィーンズ・イングリッシュ話者と意思疎通が難しいことすらある。

すなわち、かつてのロンドン市民は生まれながらに己の属する階層が宿命付けられていたのだ。人間は宿命に抗うことはできない。万が一に平民が巨額の資産を手に入れたとしても、それは“成金”と見なされ社交界には入れない。今のイギリスの二大政党政治(保守党と労働党)は、そうした階級間の摩擦から端を発している。

だが、日本にはそのような違いはない。山形の人間は、富豪も貧農もみんな山形弁を話す。もっと平たく言えば、“貧農でも人一倍の努力をすれば富豪になれる”ということだ。

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