100人の性犯罪者から逃げ切れ…漫画『絶望の犯島』完結記念!櫻井稔文先生インタビュー

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櫻井稔文先生に直撃インタビューを敢行!
櫻井稔文先生に直撃インタビューを敢行!

 本日28日、櫻井稔文先生による漫画「絶望の犯島―100人のブリーフ男vs1人の改造ギャル」の最終巻となる五巻が発売されました。「漫画アクション」にて連載されていた、本作のあらすじは──、

〝巨大闇組織、亜九東(あくとう)グループの会長宅を警備していたチンピラの釜島コーゾーは、会長の溺愛している妻と娘に手を出してしまう。ブチ切れた会長はコーゾーに対し、陰惨かつ恐るべき復讐計画を実行した。コーゾーの全身を手術により女体改造し、ピチピチのエロいギャルへと変えた上で、100人の性犯罪者が待つ無人島へと投下したのだ。性犯罪者たちが島から脱出する条件は一つだけ──コーゾーを犯すこと。処女を狙う100人の性犯罪者から逃げ切り、コーゾーは絶望の犯島をサバイブできるのか!?〟

 という、なんとも凄まじい設定のサバイバル漫画です。無人島でサバイバルする漫画は少なくありませんが、相手が吸血鬼でもなくゾンビでもなく、性犯罪者。「あ、こいつは明らかに性犯罪者だな」という顔の連中がブリーフ一丁で群れをなしてコーゾーを追いかけ回します。

 個人的に素晴らしいと思った点は、この漫画に登場する性犯罪者たちが個性豊かなことです。「性犯罪者」と一括りにしましたが、ビジュアルも一人一人異なるし、一人一人にそれぞれの性犯罪ドラマがあり、無人島における行動様式もそれぞれで異なります。配給物資を独占して性犯罪者内のヒエラルキーを作ろうとするもの、隠れ家を作り一人でサバイブするもの、果ては新興宗教を作り教祖になるものまで存在し、「性犯罪者の群れ」と一言でまとめきれません。個性豊かな、血肉の通った性犯罪者たちが、主人公の処女を狙って駆け回るのです。

 しかし、一体なにがどうなって、こんな奇抜な設定や、バラエティ豊かな性犯罪者たちが生み出されたのか。作者の櫻井稔文先生にお尋ねしてきました。

「改造ギャルvs100人の性犯罪者」ができるまで

──どういう経緯でこのブッ飛んだ設定ができあがったのでしょうか?

櫻井「僕はサバイバルモノをずっと描きたいと思ってたんです。これまで実話誌やエロギャグばかり書いてきたので、生きるか死ぬかの、緊迫感ある漫画は描いたことがなかったんです。それと無人島が大好きなのもありまして。無人島に住むとしたら何を持って行こうかな、とか、どうやってサバイバルしようかな、とか、つい考えてしまうんです。だから、無人島でのサバイバルを描きたいという気持ちが、まずあったんですね」

──なるほど、サバイバルに関しては分かりました。しかし、何故そこからギャルに人体改造とか、性犯罪者とかの発想に……。

櫻井「サバイバルとは別に、前から考えていたストーリーがあったんですよ。ヤクザの子分が親分の妻と浮気して命を狙われる……という話です。徹底した復讐劇を描きたいと思ったんですけど、簡単に殺したら復讐にならないじゃないですか。本当に苦しめるにはどうすればいいか……。それを考えていった末に、女体改造して襲わせる、という結論が出たんですね。それをサバイバルモノと組み合わせたわけです。主人公を女にした上で無人島に解き放つ。それを誰に襲わせるか……。会長の舎弟とかじゃ全然面白くない、そこら辺の男を連れて来ても仕方ない。もっと性に飢えたヤツを……そう考えた結果、性犯罪者という答えに至ったのです。だから、ポンとこの設定が出来上がったわけではなくて、いろんなものの組み合わせでこれが出来たんです」

バラエティ豊かな性犯罪者たち

──性犯罪者たちはどうやって生み出されたのでしょうか? コーゾーを襲うだけでなく、コーゾーを助ける者がいたり、コーゾーを犯すことに興味がない者もいたりと、バラエティ豊かな性犯罪者たちが出てきますよね。

櫻井「一つにはストーリー上の要請もあります。あの環境はコーゾーにとって敵ばかりですからね。味方がいないとすぐに死んでしまう。でも何の利益にもならないのにコーゾーを助けたりしないですよね。親父(注:コーゾーの父親は性犯罪者)くらいしかコーゾーを助けようとする動機のあるキャラがいない。そこでどうやって味方を作ろうかと考えて、一物が最初からなければコーゾーを犯せないので味方になりうるのではないか、と考えたわけです。じゃあ、どうしてそいつは一物を失ったのだろう、きっと酷いやつだったんだろうな……といったエピソードを考えていくと、例えばジョージができあがるわけです」

狩屋譲治。強姦されている女性にしか興奮できない変態。元戦場カメラマンで虎に一物を噛み千切られた。ゲリラ戦術の心得があり、コーゾーの力強い味方となるが…… (C)櫻井稔文/双葉社

──性犯罪者というと強姦犯というイメージが強いですが、そうではない性犯罪者もたくさん出てますよね。パンツを強盗するだけのキャラとか、気絶した片思いの女性を犯さずに股間を撮影しただけのキャラとか。その辺りもまた性犯罪者のバラエティに繋がっていたと思います。

櫻井「あからさまな強姦犯はあんまり出したくなかったんですよ。極悪人の強姦犯ももちろん出さなければいけないんですが、そこまで徹底して悪いやつじゃない、ブラックユーモアというか間抜けさというか、ちょっとファニーなところもある性犯罪者も出したかったんです。パンツ強盗とかですね」

──パンツ強盗も現実に出くわしたらメチャクチャ怖いと思いますけどね! でも、確かに強姦犯に比べると、可愛げというか、可笑しみもありますね。

櫻井「あとはリアリティの問題です。気絶した女性を前にして、股間を撮影しただけのキャラ(注:殿井睦男=ウォシュレット)は童貞だったでしょう。童貞じゃ気絶した女性を前にしたって勃たないと思うんですよ。だから、エロポーズの写真を撮って帰って家で自慰をする。その辺りが童貞性犯罪者のリアリティだと思います」

──櫻井先生の中でのイメージの膨らみが性犯罪者のバラエティに繋がったわけですね。他にもボツになった性犯罪者はいるのでしょうか?

櫻井「性犯罪者は出そうと思えばいくらでも考えられるんですが、キリがないので……。ストーリーを進めることを優先しました。本当はあと十人くらい出したかったんですけど。紹介しきれなかったやつらは単行本巻末の『ギャル犯島 性犯罪者図鑑』に収録しています」

──性犯罪者のキャラの描き分けもしっかりされてますよね。一人として似た顔のキャラがいないし、どれもがちゃんとした性犯罪者に見えます。

櫻井「あれは似顔絵なんですよ。ネット上で検索して出てきた顔画像とか、昔の仕事で得たヤクザの資料とか、知り合いの編集者の顔とかなんです」

──えっ、じゃあ、もしかして、櫻井先生は誰の顔を描いても性犯罪者っぽくなってしまうのですか……?

櫻井「いや、僕が男前に描けないってのはあると思いますけど(笑) こいつは性犯罪者だ、ってレッテルを貼ると、そう見えちゃうってことじゃないですかね?」

──それはあるかもですね(笑) しかし、性犯罪者たちのこの顔って、たとえアシスタントいても櫻井先生にしか描けませんよね? 写真渡して、「これ描いて」って言っても、絶対に先生みたいに描けませんよ。

櫻井「そうですね。顔もですけど、この身体も僕にしか描けないんですよ。『100人の性犯罪者』という設定ですが、一話目描いてる時にハッと気付いて後悔しましたね……。一話目のラストで性犯罪者がぐわーっと出てくるページあるじゃないですか」

(C)櫻井稔文/双葉社

櫻井「あっ、これをずっと一人で描き続けなければならないんだ、って。その時気付いたんです。そう思ったら、ゾーッとしましたね……。本当に無事に終わって良かったです。連載中はストレスで湿疹とか出て大変でした。作業量が凄まじくて。特にヤクザの刺青を描くのが大変で、もう描きたくなくって、刺青入ってるやつをバンバン殺していったんですよ。そしたら、最後はオタク系の性犯罪者しか残らなくなっちゃって、あれはあれでどうしようかと思いました」

性犯罪者は現代社会の縮図

──コーゾーが島に投下されるまでの期間に、性犯罪者たちは力関係に基づくヒエラルキー社会や宗教的共同体など、様々なコミュニティや社会システムを作っていましたね。

櫻井「そこはリアルにしていこうと考えていました。ヤクザや半グレ、オタク系に普通の人──、いろんな人が入り乱れている状況では、ヤクザと半グレが主導権を取ると考えたんですね。強い奴が弱い奴を奴隷にする。そういった明確な上下関係は描こうと思いました」

──コーゾーも大変ですけど、普通寄りの性犯罪者たちも大変ですよね……。凶暴な性犯罪者たちと一緒に閉じ込められて。そういった上下関係があって、さらにそこから外れる形で、宗教共同体や、群れに加わらず一人でサバイブする性犯罪者が出てくる、といった感じでしょうか。

櫻井「そういったイメージはすぐに出てきましたね。今の社会が現にそうですから。学校でも悪ガキがリーダーになって、グループに入れない子供も出てくる。そういう構造はどこでも変わらないと思ってます」

──他にもボツになった性犯罪者コミュニティの構想はあったのでしょうか?

櫻井「オタク団体を作ろうと思ってました。オタクが団結してヤクザと対決する構図です。昔、ニュースか何かで見たんですが、ゲームの販売でオタクが列を作ってたんですね。そこに半グレが割り込んできたのをオタクたちが団結して追い返した、という話があって、それが面白いと思ったんです。逆ギレしたオタクたちがヤクザたちから食料を奪うべく一斉蜂起する、それをジョージが裏で煽って共倒れを狙う、という展開を考えていたんですが、それは結局、殿井睦男(ウォシュレット)一人のキャラクターに集中させることになりボツとなりました」

お気に入りの性犯罪者

──コーゾーと父親との確執が本作の縦軸を貫いていますが、性犯罪者の父親が最後にはコーゾーを助けますよね。それで父親を憎んでいたコーゾーも少しだけ父親のことを好きになる……。あれには性犯罪で家庭を破壊してしまった人でも、頑張り次第で再起の芽はある、家族の絆を取り戻せる、といったメッセージが込められているのでしょうか?

櫻井「まったくないです。この作品には何のメッセージ性もありません。話を面白くしたい、エンターテインメント性を追求したい、という一点です」

──ありがとうございました! 最後に、お気に入りの性犯罪者を教えて下さい!

櫻井「草津凱人です」

(C)櫻井稔文/双葉社

櫻井「ビジュアル的にすごい『悪い』じゃないですか。オタク系の性犯罪者だけだとあんまり悪く見えないですが、そこにこいつが混じるだけでグッと悪くなる。色黒だし、髪型も目立つし、石を持って先頭を走る姿も原始人みたいで絵になりますよね」

著者プロフィール

作家

架神恭介

広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)

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