五郎丸選手に学ぶ「アスリートとルーティン」見直される勝利のポーズ、ビジネスにも活きる?
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先日、ラグビーの超強豪国である南アフリカ相手に大金星を挙げた、ラグビー日本代表の中心選手、五郎丸歩のルーティンが、今話題になっている。
五郎丸はゴールキックの際に、合掌の変形のようなポーズを見せる。ネット上では“浣腸ポーズ”とも言われているようだが、なんでもこれはイングランドの名選手ジョニー・ウィルキンソンにあやかったものらしい。
もっとも、五郎丸のルーティンは、静岡県では以前から有名だ。彼はヤマハ発動機ジュビロ所属の選手である。ヤマハスタジアムの観客は、彼のルーティンを見るたびに拳を握りしめながらキックを見守っている。
ラグビーに限らず、アスリートにとってルーティンは重要なものだ。一見、競技とは何の関係のない前動作だが、やっている本人にしてみれば緊張を和らげる効果がある。選手にとって、ルーティンという英単語を“願掛け”と訳しても、あながち間違いではないのだ。
伝説的メジャーリーガーであるイチローが、バッターボックスに入った際に見せるお馴染みの動作も、ルーティンのひとつだ。抽象的な表現になってしまうが、“アレ”をやることでリラックスしてゲームに臨んでいる。
その効果は、最近ではメンタルトレーナーも認めている。今回はそんなルーティンについて追求してみよう。
■ 格闘技選手の場合
筆者はグラップリングという格闘競技に携わっているが、自分の周りを見ても試合直前にルーティンを行っている選手は多い。

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ありがちなのは、ストレッチである。例を挙げる。
「A選手は試合前に必ず右のアキレス腱を伸ばす動作をしている、B選手は両肩を伸ばしている、C選手は……」といったことが必ずある。
だが中には、相撲のような四股を大きく踏む選手もいた。本人曰く、四股が一番緊張が取れる動作なのだそうだ。すなわちこれが、彼にとってのルーティンなのだ。
相撲といえば、取り組みの際の力士の所作も一種のルーティンである。
高見盛は現役時代、“ロボコップ”と呼ばれた奇異な動作で人気者になった。両拳を土俵に突き刺すように激しく動かす、あの所作だ。だがあれは決してパフォーマンスではないことを、本人が語っている。ああすることで緊張を取り除き、同時に気合を入れているというのだ。
相撲の話をもうひとつすると、取り組み前に塩を撒くのも、やはりルーティンとして見ることができる。もちろんあの所作自体は長年培われてきた伝統作法だが、問題は撒く量だ。
水戸泉のように大量の塩を豪快に土俵上へ広げる力士もいれば、寺尾のように申し訳程度の量を軽く投げる力士もいる。大事な一番になるとたくさんの塩を撒く力士だっている。
そう考えると、大相撲は“ルーティンの宝庫”なのだ。
■ ノムさんが変えた投手心理戦
だが競技の中には、ルーティンが命取りになってしまうものも存在する。それは野球である。
「何だって? イチローのあの動きはルーティンじゃないのか?」
そう、打者に限って言えば選手それぞれいろんなルーティンを見ることができる。だがこれが、投手だったら?
例えば、140キロ台のストレートとカーブとスライダーを武器にしている投手がいるとする。3つの球種の中で、彼が最も得意にしているのはスライダーだ。ここぞという時の決め球として、スライダーを投げる確率が高い。
しかし同時に、彼が“スライダーを投げる前のルーティン”を行っていたとしたら? そういう投手は話にならないだろう。それがたとえ些細な仕草でも、相手チームに次の球種を読まれてしまう。
こうしたことを日本のプロ野球で最初に目をつけたのは、“ノムさん”こと野村克也氏である。
野村氏は現役時代、メジャーリーグの伝説の打者テッド・ウィリアムスが書いた『バッティングの科学』という本に出会った。それによると、投手はこれから投げる球種ごとに別々の動作を見せるという。この頃の日本プロ野球は球種を予測するということはせず、あくまでも打者の動体視力が頼りだった。
今では投手に“心理戦の強さ”が求められ、ポーカーフェイスかつノーリアクションであることが最良とされている。だから投手のルーティンは、大抵の場合ブルペンの中で行われる。
ある選手は、リリーフが決まるといつも同じ位置に置いたペットボトルから水を一口だけ飲むそうだ。ペットボトルが少しでも異なる位置に置かれていたら、落ち着かないという。
こうしたルーティンは先ほどの大相撲とは違い、ファンの目の行き届かない場所でのことだ。だがその本質的な意味合いはまったく同じものである。
■ 見直されるルーティン
これらのルーティンは、スポーツ史では長い間“差別”を受けてきた。
日本では露骨な定期動作を行えば、「対戦相手への礼を欠いている」とみなされ非難の的にされた。先述の高見盛も、その動きを相撲協会に注意されたほどだ。また、投手がブルペンで行うルーティンも「何であいつは毎回同じことをやるんだ? 気味が悪い」ということで、ルーティン中止令を出す心ないコーチも存在した。
その事情は、アメリカでも同じである。むしろこの国のほうが、日本よりも風当たりが厳しい。相手選手の見えるところで下手な動きをしようものなら、それは挑発と見なされるからだ。野球ならば、挑発の報復として危険球スレスレのいわゆる“ビーンボール”が飛んでくることすらある。
そうしたことから自分のルーティンを捨てざるを得ず、結果的にメンタルコンディションを崩してしまった“犠牲者”は水面下にも多く存在することだろう。
だが、スポーツ界にも時代の波は訪れる。五郎丸歩のルーティンをきっかけに、“メンタルコントロール”という分野が、今後ますます見直されるのではないかと筆者は密かに考えている。
■ ビジネスにもルーティンを活用しよう
ルーティンは、スポーツだけでなくビジネスにも有効だろう。緊張を強いられる商談やプレゼンの前にルーティンを取り入れてみれば、緊張がほぐれスムーズなスピーチが出来るかもしれない。そこで成功体験が重なれば、次第に表情に自信が満ち溢れる、なんていうサクセス・ストーリーも充分に考えられる。

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ビジネスマンの具体的なルーティンとしては、商談前にネクタイを結び直す、靴紐を結び直す、顔を洗う、腕時計を眺める、髪にブラシを通す、などなど色々な試みが考えられる。
スポーツマンのみならずビジネスマンも、ルーティンを取り入れてみてはいかがだろうか。
【参考・画像】
※ 五郎丸 歩 – ヤマハ発動機ジュビロ
※ 五郎丸、世界が興味津々!キック前の“サムライおがみポーズ” – スポニチアネックス
※ 「一戦入魂」を貫いた、“不器用な天才”高見盛。~14年間の現役生活にピリオド~ – Number
※ ライバル列伝 野村克也 – BIG1 Project
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